秋冷

うちの市が将軍家の米を作っていた 講演『徳川将軍が食した御膳籾と美濃国の地域社会ー各務ヶ原市域を中心に 望月良親氏』 日曜日の午前中連れ合いと講演会に出かける。表題にもあるとおり、なかなか興味深い話だ。 御膳籾とは江戸時代将軍や大奥の女性たち…

どんぐり

『ミシンと金魚』 永井 みみ著 カケイばあさんは、認知症の気がある。聞かれなくてものべつまくなし喋り続ける。この本はカケイばあさんの独白だ。不幸な生い立ちから、ヤクザな兄貴のこと、突然出ていった亭主のことや先妻の子どもと自分の子どもを抱えてミ…

稲の秋

吉備の旅 一日目 全国旅行支援を利用させてもらい、かねてから行きたかった岡山県を訪問する。四国や山陰への乗り換えターミナルである岡山は、何度も通り過ぎたことはあるが、訪問自体はほぼ初めて。60年前の修学旅行以来である 岐阜羽島駅から新幹線で1…

『猫だまし』 ハルノ 宵子著 おや、こんな本がと図書館の書棚で見つけてきた本である。ハルノ宵子さん、言わずとしれた吉本さんの娘さん、ばななさんのお姉さんである。漫画家でいらっしゃるという他、予備知識なし。猫の挿絵も面白いが、お話も実に面白い一…

秋桜

サプライズの喜寿の祝 Yと連れ合い、下の孫が「ブロッコリーの苗」を取りに来るというので、何気ない気持ちで出迎える。ケーキを買ってきたというので、食事の後にお茶でもと思い、キーボードまで持参したのは、孫の演奏会(彼はなかなかの奏者なんです)付…

秋の雨

『寂しい生活』 稲垣 えみ子著 昨日図書館で、これという目当てもなく書棚を見回していたら、おやおや「稲垣さん」ではないかと、借りてきた本。例の有名な(?)究極の省エネ生活実施の顛末記である。 東日本大震災の原発事故をきっかけに、底なしにエネル…

鵙猛る

『老後とピアノ』 稲垣 えみこ著 新聞社を若年退職、究極の省エネライフを実践されている著者は、人並み以上の意志の人にちがいない。その人にしても、子供の頃嫌々ながらやらされたという経験はあるというものの、40年ぶりのピアノというのはなかなかハー…

金木犀

岐阜県博物館特別展「いにしえの岐阜」を見に 弥生から古墳時代を経て古代までの出土品などの展示である。土器やら鏡、石製品が主で、最も興味深かったのは「線刻絵画土器」である。 弥生時代末期に造られた「方形周溝墓」から出た土器には鹿や犬、高床式建…

秋の蝶

ハンドウォーマーを編む 以前なら九月ともなれば、待ちかねたように大物を編み始めたのに、もう気力がでてこない。 どうしようもない古糸などは処分したが、新しい残り糸などは捨てがたい。たまたまYouTubeに「引き返し編みでのハンドウォーマー」の編み方が…

草の花

『国語教師』 ユーディット・W・タシュラー著 浅井 晶子訳 久しぶりに時間を忘れて読んだ。中国文学者故井波律子さんのお薦め本である。帯に「(2014年)ドイツ推理作家協会賞受賞作」とあるが、いわゆるミステリーではない。深い愛の物語なのだ。が、話…

秋夕焼

「奇跡の戸籍『半布里戸籍』〜古代戸籍を紐解く〜」を聴く 島田宗正氏(富加町教育委員会 文化財専門官)の講演 昨日、市の歴史研究会主催で開かれた講演会に出かける。正倉院にある現存最古の戸籍、半布里(はふり)戸籍についての話である。 半布里戸籍は…

敬老日

『猫に教わる』 南木 佳士著 多分、最新のエッセイ集である。文体に惹かれるものがあって、エッセイがでれば借りて読んできたが、小説は読んだ覚えがない。そういうあまりいい読者ではないのだから、とやかく言えたものではないが、話はいつも同じような話に…

つくつくし

『新・木綿以前のこと』 永原 慶二著 昔の人は何を着てたんだろう。そう思ったのは、少し前に読んだ上野誠さんの『万葉人の奈良』で、「調」の麻織物に苦労する東国の女たちの歌を読んだからだ。ともかく麻(苧麻)の茎から繊維を取り出し、糸により、織り上…

秋風

散歩ができるようになった。 夕方、本当に久しぶりに近くのドラックストアまで歩く。もうすっかり秋の気配。 ゆきあいの空で、高い所は秋の雲、低い所には夏の入道雲が共存している。 今日は「中秋の名月」とかや。家のありあわせの花でお月様をお迎えするこ…

昼の虫

亀が出てきた。 昼過ぎ縁側の椅子でぼんやりとしていたら、ゴソゴソと物音。何と亀さんではないか。川の隣のわが家では何年かに一度はこんなことも有りだ。連れ合いは「石亀」だというが、色合いから見ると、多分「クサガメ」だろう。随分大きいからメスかな…

秋ひざし

『隻手の音なき声』 リース・グレーニング著 上田 真面子訳 Tに回してもらった一冊。副題に「ドイツ人女性の参禅記」とある。そのとおり戦後間もない頃、ドイツからはるばる来日。京都相国寺で参禅に励まれた真摯な記録である。 禅的なものから受ける印象、…

休暇果つ

『仰天●俳句噺』 夢枕 獏著 表題に「俳句」とあったので図書館の新刊コーナーから借りてくる。著者の作品は手に取ったこともなかったが、いやいや実に面白かった。文脈などというものがあるのかどうか、(よく読めばあるのですが)噺はあっちに跳びこっちに…

露けし

『日本の歴史7 鎌倉幕府』 石井 進著 夕べは酷い雨だった。八月としては初めて、一時間78ミリという豪雨と雷で、「緊急避難警報」がけたたましく鳴った。これは隣の岐阜市からの情報で、わが家の隣の川は岐阜市との境である。見ればあと10センチほどで…

秋の雨

『屍の街』 大田 洋子著 大田洋子という人は、戦前ある程度の評価を受けた作家であったらしいが、全く知らなかった。この本も、新聞の読書欄の斎藤美奈子さんの紹介で、初めて知った。 著者39歳、広島市内で被爆。当事者だけに凄惨で残酷な被爆体験記録で…

敗戦日

『街道をゆく四十二 三浦半島』 司馬 遼太郎著 BSで「新 街道をゆく 三浦半島」というのを見た。古いシリーズが再放送されていたのは知っていたが、これには「新」が付く。「鎌倉殿の十三人」に合わせた企画かもしれない。「街道をゆく」はどれも昔読んだは…

おしろい花

『庄野 潤三の本 山の上の家』 庄野 潤三著 新聞の土曜版に「夏葉社」が取り上げられていたので、図書館の在庫本を検索して、この本を見つける。 一時期庄野さんを片っ端から読んでいた。庄野さんの書かれる暖かく穏やかな家族像が好きだった。同じようなコ…

秋立つ

『古代史おさらい帖』 森 浩一著 森さんが亡くなられてすでに九年になる。調べると、はからずも一昨日が祥月命日だったようだ。森さんも佐原真さんも素人にもわかりやすい言葉で語りかけてくださり、すきな学者さんであった。いずれも故人になってしまわれて…

熱帯夜

『万葉びとの奈良』 上野 誠著 筆者の言葉によれば、この本は「万葉集に、平城京とその時代を語らせる本」である。 飛鳥・藤原京の地からの遷都、初めての中国風の大都に暮らす人々の「みやこのてぶり」という都ぶりの感覚、多くの官人たちの日常、それを支…

草を掻く

『ラスト・ワルツ』 井波 律子著 井波 陵一編 全く同時代の、この中国文学者のことを今まで知らなかった。知っていたからと言ってどうということはないのだが、それでもすでに昨年秋に亡くなったと知れば、残念というか遅れたという気持ちが湧く。 1944…

『すべての月、すべての年』 ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳 『掃除婦ための手引書』につづくルシア・ベルリンの短編集である。訳も前書同様に岸本佐知子さん。 確かに面白いのだが、半分ほどで疲れた。筆者の分身らしき語り手や主人公に何か思い入れがあ…

戻り梅雨

『日本神話の世界』 中西 進著 図書館で予約した本がなかなか入らず、Tの本棚を渉猟することが続いている。これも発掘してきた一冊だが、それほど古いものではない。 中西さんによる日本神話の読み解きだ。イザナギ、イザナミ二神の国産みから始まって天孫三…

夏あかつき

診察の梯子で血圧が200超え 総合医療センターの診察日であった。まず一昨年移植手術を受けた「形成外科」。皮膚の痙れや痛みは残るが、これは仕方がないこと。まる二年の経過観察は今回で終了となる。随分と手間のかかった手術であったから、最後まででい…

初蝉

『梁塵秘抄』 西郷 信綱著 『梁塵秘抄』と名付けられた訳は、美声のひびきが梁に積もった塵を動かした故事に由来するとは、不明であった。編んだのは、かの大天狗、後白河法皇。今様狂いとまで言われ、歌い過ぎて生涯に三度も喉を潰したという。残存するのは…

夏出水

『女たちの壬申の乱』 水谷 千秋著 壬申の乱についての著書はいろいろあるが、この本はこの乱に巻き込まれた女性たちに特化した一冊である。書記や万葉集を史料にして、筆者自身の新しい知見もあり、興味深い内容であった。 多くの女性たちの中でも、一番の…

水無月

奥飛騨旅行 一日目 県民割と旅コインの制度を使わせてもらって、小旅行をしようと思い立つ。制度利用の期限も間近く、天気の安定期間も考え、急遽宿の予約をする。二・三日前だったので空きも少なかったが、障害者の当方でも気兼ねなく温泉につかれそうで、…