草を掻く

『ラスト・ワルツ』 井波 律子著 井波 陵一編

 全く同時代の、この中国文学者のことを今まで知らなかった。知っていたからと言ってどうということはないのだが、それでもすでに昨年秋に亡くなったと知れば、残念というか遅れたという気持ちが湧く。

 1944年生まれ、ひとつ上だがまったくの同時代人である。ご主人の編集後記によれば、大学闘争にシンパシーがあり、時に「茶目っ気たっぷりに、『あたいは死ぬまで全共闘だ!』と言って笑って」おられたらしい。学生運動に関わった人たちの「組織もへったくれもなく、ひたすら阿修羅のように突っ走る」姿が、中国文学の「侠の精神」の読み取りに結実、『三国志演義』や『水滸伝』の好漢たちへの熱い想いに繋がったようだ。

 『三国志演義』も『水滸伝』もきちっと読んだこともなく、ましてご推薦の『丗説新語』は初めて耳にしたのだが、井波さんの解説文章は歯切れよく、それだけで読ませられた。「鋭さとユーモア感覚」を真髄に「研究者より腕のよいライターを到達目標に」されていた井波さんの面目躍如である。

 題名『ラスト・ワルツ』は大ファンだったロックバンドのファイナルコンサートかららしい。

 尚、没後この本を編まれたらしいご主人の「編者あとがき」がいい。深い愛情を感じ、お幸せであったと思うばかりだ。

 本当にもう少し以前に知っていたら、同じような時代に生きたひとりとしてファンになっていただろうに。

 

 

 

        頭から水かぶつては草を掻く

 

 

 

 雨がやっと上がったら、酷い草丈である。こちらも少しは手伝ったが、なにせ不完全体であまり役立たず。連れ合いは毎日早朝を選んで草掻き。ちょっとだけ見られるようになってきた。