秋の雨

『屍の街』 大田 洋子著

 大田洋子という人は、戦前ある程度の評価を受けた作家であったらしいが、全く知らなかった。この本も、新聞の読書欄の斎藤美奈子さんの紹介で、初めて知った。

 著者39歳、広島市内で被爆。当事者だけに凄惨で残酷な被爆体験記録である。地獄と化した被爆直後の様子もさることながら、ひと月もたって外傷がないのに死んでいく人々。まるで死刑の宣告を待つような日々の重苦しさが心に響く。

 「破壊されなくては進歩しない人類の悲劇のうえに、いまはすでに革命のときが来ている。破壊されなくても進歩するよりほか道はないと思える。今度の敗北こそは、日本をほんとうの平和にするためのものであってほしい。」

 悲痛な思いで大田さんがこう書いて、すでに七十七年。状況は変らないばかりか悪化してるかもしれない。尚、彼女は原爆の後遺症に苦しみながら、五十七歳で亡くなられたとあった。

屍の街 (平和文庫)

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     うらなりのいくども濡らし秋の雨

 

 

 

 

芙蓉