熱帯夜

『万葉びとの奈良』 上野 誠著

 筆者の言葉によれば、この本は「万葉集に、平城京とその時代を語らせる本」である。

 飛鳥・藤原京の地からの遷都、初めての中国風の大都に暮らす人々の「みやこのてぶり」という都ぶりの感覚、多くの官人たちの日常、それを支えた地方の労働力、そして今に繋がる住まいとガーデニング、同時代に来日された鑑真の話などである。

 引用の歌の数々は、よく見聞きする著名な万葉集秀歌と違って、親しみやすい庶民のつぶやきそのものである。取り上げられたものから、初めて知ったことだけを少し触れたい。

 秋田刈る 仮廬(かりほ)を作り 我が居れば 衣手寒く 露そ置きにける

 ここでカリホという言葉の説明がある。平城宮に勤める下級官僚たちは半官半農だった。耕作地は都に近いとはかぎらず、「農繁期に耕作地に宿泊するための仮設的建造物」がカリホだったという。

 さて、『百人一首』の冒頭、天智天皇の歌

 秋の田の 仮廬の庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ

 の意味がこれではっきりした。一首目というだけでよく知っているのだが、何ていうことはない。およそ天皇の歌とは思われない内容で、庶民歌のパクリのようなものだ。これを天皇の御歌とするとは、ちょっとお気の毒だ。

 

 誰が何と言ったって、地球温暖化は間違いない。昨夜の我が家の最低気温は28・5度。半屋外の風通しのよい場所である。連れ合いによれば、最も高い最低気温とのこと。

 先月末、四回目のワクチン接種がすんで、寝苦しい夜が終わったと思ったら、夜もこの暑さである。冷房が働きっぱなしで喉がおかしい。

 ワクチン副作用で、今回は初めて発熱した。ただし一日ですんだから、それは幸い。

 

 

 

 

        ワクチンの痛みのずんと熱帯夜

 

 

 

 

ヒマワリモドキ