秋の蝶

ハンドウォーマーを編む 以前なら九月ともなれば、待ちかねたように大物を編み始めたのに、もう気力がでてこない。 どうしようもない古糸などは処分したが、新しい残り糸などは捨てがたい。たまたまYouTubeに「引き返し編みでのハンドウォーマー」の編み方が…

草の花

『国語教師』 ユーディット・W・タシュラー著 浅井 晶子訳 久しぶりに時間を忘れて読んだ。中国文学者故井波律子さんのお薦め本である。帯に「(2014年)ドイツ推理作家協会賞受賞作」とあるが、いわゆるミステリーではない。深い愛の物語なのだ。が、話…

秋夕焼

「奇跡の戸籍『半布里戸籍』〜古代戸籍を紐解く〜」を聴く 島田宗正氏(富加町教育委員会 文化財専門官)の講演 昨日、市の歴史研究会主催で開かれた講演会に出かける。正倉院にある現存最古の戸籍、半布里(はふり)戸籍についての話である。 半布里戸籍は…

敬老日

『猫に教わる』 南木 佳士著 多分、最新のエッセイ集である。文体に惹かれるものがあって、エッセイがでれば借りて読んできたが、小説は読んだ覚えがない。そういうあまりいい読者ではないのだから、とやかく言えたものではないが、話はいつも同じような話に…

つくつくし

『新・木綿以前のこと』 永原 慶二著 昔の人は何を着てたんだろう。そう思ったのは、少し前に読んだ上野誠さんの『万葉人の奈良』で、「調」の麻織物に苦労する東国の女たちの歌を読んだからだ。ともかく麻(苧麻)の茎から繊維を取り出し、糸により、織り上…

秋風

散歩ができるようになった。 夕方、本当に久しぶりに近くのドラックストアまで歩く。もうすっかり秋の気配。 ゆきあいの空で、高い所は秋の雲、低い所には夏の入道雲が共存している。 今日は「中秋の名月」とかや。家のありあわせの花でお月様をお迎えするこ…

昼の虫

亀が出てきた。 昼過ぎ縁側の椅子でぼんやりとしていたら、ゴソゴソと物音。何と亀さんではないか。川の隣のわが家では何年かに一度はこんなことも有りだ。連れ合いは「石亀」だというが、色合いから見ると、多分「クサガメ」だろう。随分大きいからメスかな…

秋ひざし

『隻手の音なき声』 リース・グレーニング著 上田 真面子訳 Tに回してもらった一冊。副題に「ドイツ人女性の参禅記」とある。そのとおり戦後間もない頃、ドイツからはるばる来日。京都相国寺で参禅に励まれた真摯な記録である。 禅的なものから受ける印象、…

休暇果つ

『仰天●俳句噺』 夢枕 獏著 表題に「俳句」とあったので図書館の新刊コーナーから借りてくる。著者の作品は手に取ったこともなかったが、いやいや実に面白かった。文脈などというものがあるのかどうか、(よく読めばあるのですが)噺はあっちに跳びこっちに…

露けし

『日本の歴史7 鎌倉幕府』 石井 進著 夕べは酷い雨だった。八月としては初めて、一時間78ミリという豪雨と雷で、「緊急避難警報」がけたたましく鳴った。これは隣の岐阜市からの情報で、わが家の隣の川は岐阜市との境である。見ればあと10センチほどで…

秋の雨

『屍の街』 大田 洋子著 大田洋子という人は、戦前ある程度の評価を受けた作家であったらしいが、全く知らなかった。この本も、新聞の読書欄の斎藤美奈子さんの紹介で、初めて知った。 著者39歳、広島市内で被爆。当事者だけに凄惨で残酷な被爆体験記録で…

敗戦日

『街道をゆく四十二 三浦半島』 司馬 遼太郎著 BSで「新 街道をゆく 三浦半島」というのを見た。古いシリーズが再放送されていたのは知っていたが、これには「新」が付く。「鎌倉殿の十三人」に合わせた企画かもしれない。「街道をゆく」はどれも昔読んだは…

おしろい花

『庄野 潤三の本 山の上の家』 庄野 潤三著 新聞の土曜版に「夏葉社」が取り上げられていたので、図書館の在庫本を検索して、この本を見つける。 一時期庄野さんを片っ端から読んでいた。庄野さんの書かれる暖かく穏やかな家族像が好きだった。同じようなコ…

秋立つ

『古代史おさらい帖』 森 浩一著 森さんが亡くなられてすでに九年になる。調べると、はからずも一昨日が祥月命日だったようだ。森さんも佐原真さんも素人にもわかりやすい言葉で語りかけてくださり、すきな学者さんであった。いずれも故人になってしまわれて…

熱帯夜

『万葉びとの奈良』 上野 誠著 筆者の言葉によれば、この本は「万葉集に、平城京とその時代を語らせる本」である。 飛鳥・藤原京の地からの遷都、初めての中国風の大都に暮らす人々の「みやこのてぶり」という都ぶりの感覚、多くの官人たちの日常、それを支…

草を掻く

『ラスト・ワルツ』 井波 律子著 井波 陵一編 全く同時代の、この中国文学者のことを今まで知らなかった。知っていたからと言ってどうということはないのだが、それでもすでに昨年秋に亡くなったと知れば、残念というか遅れたという気持ちが湧く。 1944…

『すべての月、すべての年』 ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳 『掃除婦ための手引書』につづくルシア・ベルリンの短編集である。訳も前書同様に岸本佐知子さん。 確かに面白いのだが、半分ほどで疲れた。筆者の分身らしき語り手や主人公に何か思い入れがあ…

戻り梅雨

『日本神話の世界』 中西 進著 図書館で予約した本がなかなか入らず、Tの本棚を渉猟することが続いている。これも発掘してきた一冊だが、それほど古いものではない。 中西さんによる日本神話の読み解きだ。イザナギ、イザナミ二神の国産みから始まって天孫三…

夏あかつき

診察の梯子で血圧が200超え 総合医療センターの診察日であった。まず一昨年移植手術を受けた「形成外科」。皮膚の痙れや痛みは残るが、これは仕方がないこと。まる二年の経過観察は今回で終了となる。随分と手間のかかった手術であったから、最後まででい…

初蝉

『梁塵秘抄』 西郷 信綱著 『梁塵秘抄』と名付けられた訳は、美声のひびきが梁に積もった塵を動かした故事に由来するとは、不明であった。編んだのは、かの大天狗、後白河法皇。今様狂いとまで言われ、歌い過ぎて生涯に三度も喉を潰したという。残存するのは…

夏出水

『女たちの壬申の乱』 水谷 千秋著 壬申の乱についての著書はいろいろあるが、この本はこの乱に巻き込まれた女性たちに特化した一冊である。書記や万葉集を史料にして、筆者自身の新しい知見もあり、興味深い内容であった。 多くの女性たちの中でも、一番の…

水無月

奥飛騨旅行 一日目 県民割と旅コインの制度を使わせてもらって、小旅行をしようと思い立つ。制度利用の期限も間近く、天気の安定期間も考え、急遽宿の予約をする。二・三日前だったので空きも少なかったが、障害者の当方でも気兼ねなく温泉につかれそうで、…

梅雨明

『戦争は女の顔をしていない』 スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ著 三浦みどり訳 第二次世界大戦でのソビエットの戦死者は1450万人とも言われ、桁外れに多い。そして、この本によれば、100万人を越える女性も兵士として戦ったそうだ。十代の後半か…

明易し

『生きて帰ってきた男』 小熊 英二著 これは、著者が自身の父親(謙二さん)の聞き手になって編んだ、オーラルヒストリーである。 大正末年に生まれた彼は、当時の庶民的な暮らしの中で成長、満19歳で招集された。1944年のことで、すでに日本には満足…

ビール

昔がたりをする。 地方版に「戦争を語る」というコラムが不定期で掲載されている。先日、隣町の95歳の男性の体験談を読んでいて、名前に聞き覚えのあるような気がした。戦後、高校教師になったというくだりを読んで、はたと思い出し、旧友にメールをする。…

『ウマし』 伊藤 比呂美著 伊藤さん好きのTから回ってきた。こちらも好きだからすぐ読む。難しいことはなんにもない。好きな食い物、懐かしい食い物、嫌いな食い物にまつわるエッセイ。別の本で、検診の結果「食べすぎ」と一刀両断にされて落ち込でおられた…

夏の空

弥生遺跡と木曽三川公園へ 本格的な暑さになる前にと、近場へ。 まずは愛知県清須市にある「あいち朝日遺跡ミュージアム」。紀元前6世紀から紀元後4世紀まで営まれた大規模な集落跡である。清須のインターチェンジの建設で発掘された遺跡で、日本でも有数…

片かげり

『評伝 石牟礼道子』米本 浩二著 良かったからとTに回してもらう。確かに興味深い中身であった。そして、ただただ石牟礼道子というただならぬ精神に圧倒された。 あとがきで著者は「石牟礼道子の場合は底が見えない。」と書き、解説で池澤夏樹は著者の努力に…

はつ夏

此の時期の厨仕事をする。 お店に青梅が出ている。青々とした可愛らしさで買いたくなるが、買ってどうするか。うちは梅干しはほとんど食べないから、梅干しは漬けない。欲しいのは底をついた梅醤油だが、梅一キロは多い。「焼酎に漬けたら飲むから、作ってく…

明易し

『芭蕉の風景 下』 小澤 實著 いよいよ芭蕉の最晩年である。 元禄七年春、芭蕉五十一歳。最後となる春を江戸で過ごし、初夏、西を目指して旅立つ。同行は身辺の手助けをする少年次郎兵衛のみ。途中名古屋に足を止め、古い門人の荷兮らと歌仙を巻くが、どうも…