春疾風

『北園町九十三番地 天野忠さんのこと』 山田 稔著 天野さんのことは、山田さんの著書を通して知った。お二人のお付き合いはさぞかし長年にわたるものであろうと思い込んでいた。ところが、さにあらず。この本によれば親身なおついあいは天野さんの晩年、わ…

余寒

『おやつ泥棒』 アンドレア・カミッレー著 千種堅訳 相変わらず春の気配は遠い。立春後にも何度も雪が舞う。今年初めてのダウン。いつもと全く同じ、高熱と胃腸障害というパターンで、念の為車の中で待機してpcr検査というのも、いつもと一緒。幸い今回も…

春浅し

『帰れない山』 パオロ・コニェッティ著 関口英子訳 このイタリア文学を読もうとしたきっかけを忘れた。どこかで推薦文を読んだのだろうが。借り出す本のリストにメモってあったので、検索して借りてきた。2017年のイタリア文学界の最高峰ーストレーガ賞…

春寒し

『飛ぶ教室』 ケストナー著 丘沢静也訳 先に読んだ本で、川本さんは中学生のころ、この本を読んで身につまされたといったことを書いておられた。 主人公の一人の少年が、クリスマスだというのに帰省できない。親が、貧しくて帰省の費用が工面できないので寄…

水仙

『すごいトシヨリ散歩』 池内 紀・川本 三郎著 最初、池内さんの『すごいトシヨリBOOK』と混同していた。「同じじゃないよ」とTに教えられてよく見たら、こちらは川本さんとの共著であった。 池内さんがお亡くなりになる寸前までの対談を含めた内容。お互い…

大根

『邪馬台国再考』 小林 敏男著 この本は、邪馬台国(最近はヤマトコクとよむのが一般的らしい)について文献史学の立場からアプローチしたものである。 邪馬台国については従来より九州説と近畿説があり、様々な論争と検証がなされてきた。これらの論争への…

『日本史の輪点』 中公新書編集部編 お経の本ばかり読んでいたから、少し目先を変えたいと思い読み始めたもの。いつもながら古代史から中世前期までは興味深く進むのだが、室町に入ると突端にいけない。ちょっと跳ばして江戸へ、近代(明治・大正)もとびと…

猫の恋

『いつか死ぬ、それまで生きるわたしのお経』 伊藤 比呂美著 ずっと伊藤さんのお経に関係する本を読み続けている。伊藤さんと同じように信心があるわけではない。突き詰めれば、死ねば宇宙の微塵となって散らばるだけと思っている。その一方で毎日仏壇の扉を…

どんど焼き

『ドク・ホリディが暗誦するハムレット』 岡崎 武志著 春陽堂書店のウェブで連載されている「オカタケな日々」はいつも愉しみに拝読している。この本はそれを纏めたもので、既読の部分もあるが応援の気持ちでTが買ってきた。オカタケさんのは、文章が上手い…

『句あれば楽あり』 小沢 昭一著 多分読んだことがあるのだが、中身はすっかり忘れているから何度だっていいのです。過日読んでいた「東京やなぎ句会」の続きのようなもので、小沢さんの韜晦した洒脱な語り口が心地よい。 ちっとも上達しないと一日一句を志…

着ぶくれ

『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』 伊藤 比呂美著 読むいうより読まされた。散文詩というのだろうか。文章がつるつるつるとリズムよく流れ、ひとりでに頭に沁みてくる。古今東西、詩人に小説家、古事記にお経に梁塵秘抄、あらゆる声借りが一層流れをせきたてる。 …

松過ぎ

『日常を愛する』 松田 道雄著 松田さんの本を久しぶりで読んだ。文末まで意志がしっかり通い、簡潔できっぱりした物言いに、「ああこの口ぶりに何度も納得させられ、慰められた」と思い出した。『育児の百科』や『わたしは二歳』など、どれだけ開いたことか…

虎落笛

『友あり駄句あり三十年』 東京やなぎ句会(編) 面白くてためになり、いい本だった。個性的なメンバーの飄逸な話もさりながら、なかなか皆さんいい句を詠まれ、さすがだなあと感心しきり。東京やなぎ句会の存在は、小沢昭一さんや江國滋さんの本などで読ん…

『まくら』 柳家 小三治著 小三治さんという落語家の偉大さをよく知らなかったのはつくづく残念。追悼番組で「初天神」を聞いて、全く魅了された。これも後、知ったのだが。「初天神」の「金坊」はお得意中のお得意だったらしい。「まくら」も名人芸だという…

冬の鳶

三年がかりの透かし編みのベスト 編み始めたのが2019年の1月。間に大きな手術やら入院やらですっかりその気もなくなって、やっと三年がかりで編み上がった。相変わらず出来は今一歩だが、私にしてはややこしい透かし模様をよく編み上げたと言うべきか。…

冬椿

『ヨルガオ殺人事件 上・下』 アンソニー・ホロヴィッツ著 山田 闌訳 上下二巻を、金曜日に借りてきて四日で読んだ。年末の慌ただしいのにである。ミステリーは、作品の価値にかかわらず問題が解決するまでは読み続けないと落ち着かない。 さて、評価はどう…

『読み解き般若心経』 伊藤 比呂美著 いやあ、実に実に面白かった。最後の方は目頭が熱くなった。 そもそもNHKの「こころの時代」で伊藤さんのお経の話を聞いたのが始まりだ。それで『いつか死ぬ、それまで生きるわたしのお経』を買って読み始めた。途中で図…

冬の空

『寡黙なる巨人』 多田 富雄著 12月8日、開戦日の前後に新聞やテレビで戦争に関する特集が組まれていた。この老人がいまさら開戦の詳細を振り返って意味があるとは思えないのだが、知らなすぎることが多いと加藤陽子さんの本を借りてきた。『戦争まで 歴…

北風

『春楡の木陰で』 多田 富雄著 ダンボール箱に積まれたTの既読本の中から出してきた一冊。 多田さんは免疫学の世界的泰斗で文筆家でもある。学者として油ののっている時期に脳梗塞で倒れられ、重い後遺症が残った。死を願われるほどの深刻な状況にもかかわら…

木の葉掻く

『俳諧辻詩集』 辻 征夫著 アマゾンで一円で購入。もちろん送料は別だ。なかなかいい本で、得した気持ち。俳句に詩が連動している。私はもっぱら俳諧味のある俳句に惹かれた。季節のせいか冬の俳句に感心する。 床屋出てさてこれからの師走かな 熱燗や子の耳…

十二月

『姉の島』 村田 喜代子著 『飛族』と同じく離島の海女の婆たちの話である。 島の海女たちは八十五の齢を迎えると、倍暦といって齢を倍に数える習わしがある。ミツルと小夜子は春の彼岸に倍歴で百七十歳になった。現役は引退しても、まだまだ潜る元気はある…

もみぢ

『食べることと出すこと』 頭木 弘樹著 以前「ほぼ日」で、糸井さんが「幸福というのはおいしく食べて、すっきり出して、ぐっすり眠れること」というようなことを書いておられたが、全くそのとおりだと思った。大病をして歳をとって睡眠障害やら胃腸の不調や…

時雨

映画『リトル・ダンサー』を観る 昨日は終日雨だったので、BS映画館の『リトル・ダンサー』を観た。2000年のイギリス映画。 話は80年代の半ば、イギリスの炭鉱町ダラムが舞台だ。少年のビリー・エリオットは炭鉱夫の父や兄、認知症気味の祖母と暮らす…

今年米

『埴輪は語る』 若狭 徹著 昨日のニュースだったと思うが、大山古墳(仁徳天皇陵)の調査で、やはり大型の円筒埴輪が並べられていたことが判明したと伝えていた。この本の著者によれば古墳の規模で立て並べられた円筒埴輪の数は大きく違い、おそらく大山古墳…

神無月

紅葉と「うだつ」の町へ 暖かさの小春日和も今週までとのことで、前々から気になっていた近場の町に出かける。まずは紅葉の名所と聞く美濃市の「大矢田神社」へ。 やはり紅葉が目当ての参拝者がかなり。 ここはかっては神仏習合で禅定寺という寺があり、仁王…

暮早し

『サコ学長、日本を語る』 ウスビ・サコ著 毎度のことだが、Tが読んでいて面白そうなので、回してもらう。 京都清華大学の学長がアフリカ出身の方ということは、何かで読んだことがあったが、どんな方かは知らなかった。アフリカのマリ共和国に生まれ、中国…

冬に入る

『山田 稔 自選集Ⅲ』 山田 稔著 Ⅲ巻は、パリでの思い出とスコットランド紀行、それに「自筆年譜」を加えたものである。作品は、いずれも既読であったが面白かった。いつもながら文体が読みやすく、味わい深い。スコットランド紀行もいいが、中でも「シモーヌ…

障子貼る

『山田 稔自選集Ⅱ』 山田 稔著 山田さんの自選集二冊目である。この巻は故人に係る思い出が多く、追悼集といってもよい。しみじみした話は印象に残っていて、どれもすでに読んだことを思い出した。書かれている主な故人をあげると、「八十二歳のガールフレン…

新酒

飛騨に紅葉と国宝・町並みを見に行く 「こころ旅」で見た飛騨古川の町並みを見たいとTが言う。多分飛騨の紅葉は見頃に違いないと、またまた急遽出かけることに。(遊ぶ相談はすぐに決まる) 飛騨古川は私(連れ合いとも)にとっては、思い出深い町だ。という…

刈田

映画『老後の資金がありません』を見に行く 今朝、どうでも良いことで連れ合いと丁丁はっしとやりあったので(もちろん言葉で)、昼の用意を放棄して映画を見に行く。宣伝で見たいと思っていた作品である。一人で行くのは何年ぶり?最近は車に乗らないのでバ…