風花

『日本人の源流』 齋藤 成也著

 NHKBSで「日本人とは何者なのか」という番組を観た。DNA解析を通じて、日本人のルーツに迫ろうという内容で、とても面白かった。

 最初に日本列島に棲み着いた縄文人と稲作文化を伝えた弥生人が混血して現日本人の元になったこと、混血の割合がアイヌや沖縄の人と列島人とでは大きく違うこと、こういうことは今までも聞いていたことだが、今回の番組で初耳だったのは、古墳時代になって大陸からの渡来がさらに進み、そこから現在に繋がる祖先集団が誕生したとする説である。確かに古墳時代頃、大陸からの渡来はかなりの規模ではなかったかと、当地の歴史を概観しても推理できる。(当地の後期古墳の多くは渡来人のものではないかと言われている)

 

 さて、この考えを含め、日本人のルーツについて、もう少し知りたいと借りてきた本が上記のものだ。できるだけ新しい知見で、乏しい能力でもわかるものをと思ったのだが、全くの能力不足。ノートを片手にメモを録りながら読んでもお手上げで、家人には「またお勉強か」と笑われた。

 

 結果、ゲノム解析の方法やら苦労話、結論に到達するための計算法などは斜め読み、結論づけられたことだけを記録しておきたい。なおこの本では日本列島への「三段階渡来説」を採る。テレビの「三段階渡来説」とは、渡来時期の波の捉え方で若干異なる。

 七万年前アフリカを出た祖先は、約四万年前にこの列島に到り縄文人となったようだが、東ユーラシアに拡散していった他の集団と比べて出アフリカの早い段階で他の系列から分岐、極めて特異な集団だったらしい。が、彼らの起源はまだ謎だということだ。

 縄文時代の後期と晩期に第二の渡来の波があった。彼らは大陸沿岸の人々で「海の民」だった可能性があるらしい。採集漁労とすこしの耕作を生業として主に列島中心部に入り込んだ。

 弥生時代に入ると第二の渡来民と近似した第三の渡来民が稲作を伝えた。彼らとその子孫は列島中心部に沿って居住域を拡大、周辺部では第二の渡来民のDNAが強く残った。また、北海道や沖縄では第三の渡来の影響は受けなかった。

 古墳時代以降も、第三の渡来民が来た。東北地方の第一の渡来民(縄文人)の子孫は、大部分が北海道に移り、北方民族との混血でアイヌ人なった。列島南部では九州からの第二、第三渡来人のゲノムを受け継いだ人の移住などで沖縄人が形成された。

 筆者は出雲人のDNA研究結果から、第二の渡来人が「国津神」集団で、第三の渡来人が「天津神」集団ではないかとも推理している。

 

 要は日本人というのはかなりの混血人なのである。何となく慕わしい「縄文人」のゲノムが現代ヤマト人には14から20%しかないというのは、ちょっとがっかりした情報だ。

いずれにしてもこの本はわが手に余る内容だったので、もう少しわかり易いのがあれば読んでみたい。

 

        

         風花やメタセコイアの朱の絨毯

 

 

 

 メタセコイアは落葉前の写真です。うちの木蓮の落ち葉がやっと片付きました。葉が落ちきった中から現れたのは、ススメバチの大きな巣。       

 今年は例年に比べると読書量が少なく、老化傾向で反省。感動的だった三冊がなかなか選べません。