行く春

アイヌ歳時記』 萱野 茂著

 再びこの本について。読みながらアイヌの人と縄文人の関係に思いを馳せる。同じように狩猟採集民でありアミニズムの人々であり、かっての東北地方では隣り合って暮らした人々であっただろう。最近の遺伝子調査では「アイヌ人は現代日本人の中では縄文人の遺伝子を最も色濃く引き継いでいる」と言われている。最近関心が高い縄文人の暮らしぶりや文化などにも近似したアイヌ文化であったにちがいない。

 この本によれば男性は狩猟民として刃物が上手に使えることが第一であり、女性は火の用心と針仕事だと言う。あの見事な民族衣装を見ればなるほどと思われるのだが、これらはは縄文女性の土器や土偶づくりに匹敵するのではないか。どちらも集団としての伝統はあるのだが実に個性的で力強く美しい点では一緒だ。日本人の文化的ルーツを知るという点でもアイヌ文化はもっと大事にされるべきであったと思う。

 北海道の地名はアイヌ語が元で名付けられたものが多いのは知っているが、この本で「襟裳岬」の語源を知った。「襟裳岬」とは「エルムノッド」といい「ネズミ岬」のことでネズミの総元締めがいるところと信じられていたと言う。残念ながらまだ「襟裳岬」に行ったことがないが岬の突端に立つと「ネズミの群れが陸を目指して走ってくるように見える」らしい。

 アイヌ民族についてはもう少し何かを読んでみようと思う。

 

 

 

 

     行春や鳥啼魚の目は泪   松尾 芭蕉

 

 

 

 春と共にひとつの時代が終わる。私にとって「平成」はどんな時代だったのか、ぼんやりと思うこといろいろ。

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