冬ざるる

『グレイラットの殺人』 M・W・クレイヴン著 東野さやか訳

 新聞の文庫本案内で見つけて読み始めたのはいいが、709ページもあり随分時間がかかってしまった。つまり夢中になるほど面白かったわけではない。

 要は復讐譚である。犯罪現場に「グレイラット」の置物を残して置く手口など古典的な雰囲気もある。だが、犯罪者側も捜査側もインターネットを駆使し、背景に首脳国会議やアフガニスタン情勢が描かれるなど、まさに今、現在のミステリーでもある。

 これが今のイギリスやアメリカの現状なのかと思ったことだが、捜査の中心者は国家犯罪対策庁のポーだが、彼の天才的アシスタントも、育休中の上司も、共に捜査をする保安庁の職員も、司法解剖病理学者も、FBI特別捜査官もすべて女性なのである。

 そう言えばこの前観ていた中国ドラマ『ロング・ナイト』の公安官(日本の警察官か)も上司が若い女性だった。

 日本のジェンダー指数が特別低いことは、いつも言われるが、日常的なドラマや小説でもまざまざと悟らされたわけだ。

 感想がミステリーから離れてしまったが、お薦めかどうかはちょっと難しい。解決かと思えば反転、話が更に広がり見事に収斂する面白さはある。根気よく読むことが肝心かと。

 年賀状の欠礼挨拶状が届く時期になって、思わぬ人の訃報を知る。

昔の同僚で唯一仲人をした年下の彼女の死。嬉しそうだった花嫁姿を思い出し、人の世の儚さを思う。

 

 

       われよりも若き友の訃冬ざるる