『友ありてこそ、五七五 』東京やなぎ句会編

 多士済済の東京やなぎ句会も、小三治さんの逝去で2021年に終焉したことは既に触れた。出版当時(2013)はまだお元気の方も多いが、宗匠光石さん(入船亭扇橋)が脳梗塞で入院、翌年には変哲さん(小沢昭一)の逝去と有能メンバーを欠いた状態だ。

 この本は、会員のエッセイやら思い出を語りながらの句会、光石さんの全句から好きな句を選んだものなど、お二人への想いを纏めたものだ。会員だけでなく黒田杏子さんや中原道夫さん、金子兜太さん、鷹羽狩行さん、大牧広さん、水原春郎さんの文と選句もある。

 句会はいつもながら軽妙洒脱な掛け合いで読んでいて楽しい。こんなにお喋りしていて席題などよく詠めるものだと感心しかない。多分句会そのものを楽しもうということだろう。

 変哲さんの俳句は掲載されていないが、光石さんの句はたくさん収録されている。若い頃から馬酔木に入り句歴も長いというので、いい句を詠んでおられる。俳人の諸氏や会員の皆さんがやなぎ句会での作品から選句されたものから少し引用させていただいた。嫋やかで繊細、情緒的な句である。

やたらとばして石鹸玉売り無言

母今も餅黴けづる新聞紙

女の足日焼け終戦の日の記憶

アルバムや母逝きし夜の遠蛙

子らの夢まろき月夜の雪だるま

春さむき鏡の中のよそよそし

コーヒーの匂ひに触れし春の雪

夜店の灯うつして川のよみがえる

茶房出てなほ永き日の空ありぬ

春雨の雫をきいてひとりかな

昭和44年からずっと通して読んで、初期の方がいい。誰でもそういうものかもしれない。

俳人の文と選句では中原道夫さんの筆と目が一番。いい句を選ぶ人だと思った。

 

 

                               雪降るやカッパで濡れて書留便

 

 

 

昨日は大雪で13センチの積雪.今日は晴れ渡りありがたい。