茂り

『龍太語る』 飯田 龍太・飯田 秀實監修

 

 この本は龍太さんの晩年の聞き書きを纏めたもので生涯にわたる思い出話である。読んでいると龍太さんの人となりがわかってくる。華奢な体躯には似合わず豪胆で気骨があるとか、もちろんそれは『雲母』をスパッと終刊にされたことからでもわかることだが。以前知っていた先輩の俳人の方がまるで現人神のように崇めておられたがそういうカリスマ性を秘めた方だったようだが、師事するには残念ながら時代的に遅れた。

 「お客といっても俳人、俗に言えば弟子なんだけれど、こちらのサービスは徹底していた。三食は出さなければならない。・・・うちに限らず当時の俳句の先生はほとんどが持ち出しだった。」

 蛇笏さんの頃の句会の話である。龍太さんにも太っ腹なおもてなし精神は受け継がれていたらしく、境川のお宅でご馳走になったという話はあちこちで読んだし、この本でもお宅で客人をもてなす話が出てくる。戦前は地主で広い屋敷と家屋をお持ちであったからそういうことも可能だったのだろうが、それにしても奥様方の内助の功は並大抵のことではなかったにちがいないとどうでもよいことに関心がいく。

 福田甲子雄さんとの対談で「季感のない季語を使っている俳句が多くなっている」と最近の俳句を批判されていたことが心に残った。巻末に最後の自薦八十句が自筆のまま収録されている。いくつかは書き写したこともある句だ。改めてしみじみと読んだ。

 

 

 

 

           草も木も茂り重たし雨のなか

 

 

 

 

龍太語る

龍太語る

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