敬老日

『猫に教わる』 南木 佳士著

 多分、最新のエッセイ集である。文体に惹かれるものがあって、エッセイがでれば借りて読んできたが、小説は読んだ覚えがない。そういうあまりいい読者ではないのだから、とやかく言えたものではないが、話はいつも同じような話になる。

 若い頃、医師と文筆家の二足の草鞋を履いていたこと、死を看取る癌病棟のでの日々に疲れてパニック障害となりうつ病を患ったこと、受験に失敗し都落ちをしたこと。

 毎回出されるこれらの話題に、僭越ながら人はここまで過去に拘るものなのかとさえ思ってしまう。

 「こんな安楽な時を過ごせるのは期間限定であることが日に日に明らかになってくる」とおっしゃるが、まだ我が身より六歳も若い。(私も含めて)「老い、老い」と騒ぐが、今や後期高齢者でも全人口の15、5%だと、今日の新聞にあった。自戒も含めて「老い」にあまり感傷的にはなりたくはない。

 いくつかの話の中で、息子たちの連れ合いに「ハンコ」をプレゼントしたという話(「夜明けのハンコ」)と、ネットラジオを愛用しているという「ネットラジオを聴く」がよかった。

 

 さて、台風禍の敬老の日である。先程けたたましく隣の市からの避難警報がなったが、幸いこの辺りは大事にはいたらなさそうだ。「わが町の魅力」という番組をみていて、この基地の町に魅力なんてあるかしらんという話になった。「災害の少ない町」と連れ合いが言って、納得。ずっとそうであってほしいものだ。

 

 

 

        爺は畑婆は家事をと敬老日