青林檎

無人島のふたり』 山本 文緒著

 膵臓癌で4ヶ月の余命宣告を受けた作家の病床日記である。この本は俵万智さんの読書案内で知ったが、(俵さんも最近食道癌で放射線治療を受けられたらしい)寡聞にてこの人のことはよく知らなかった。さまざまな賞を受賞されている直木賞作家らしい。

 一昨年の春、体調不良を訴えて受診した彼女を待ち受けていたのは、ステージ4という膵臓がんの宣告。毎年人間ドックも受けておられたのによほど発見の困難な場所であったらしい。手術は無理、すでに転移もあり治療法は抗がん剤の投薬のみとなる。これがとてもつらくて、投薬しても9ヶ月と聞かされた彼女は、一切闘病を諦めて、自宅での緩和ケアだけを選択された。

 安らかにうまく死にたい、そう思う約半年間の記録である。間違いなく目の前に死がぶら下がった時、人はどうふるまうか。彼女は「書く」という天職を活かして自分を客観視し、半年間を見事に生ききった。時に弱音や愚痴、涙もあふれるが、配偶者との穏やかな日常を楽しみ、身辺を片付け、親しい人には別れを告げ、さらに出版するものの最後の手入れもする。その強さには心ゆさぶられるものがあった。

 4ヶ月の余命宣告を超えて約半年、一昨年の秋逝去、享年58歳の若さであったという。

 

 

      アルバムの誰彼若し青林檎

 

 

 昔詠んだ句だが、彼女が古い写真を見て感慨にふけるくだりから思い出した。

 二日続きの曇天。やや気温が低いだけありがたい。昨夜は何日ぶりかに冷房なしの就寝。

 ミシンを出して、埒もないものを縫う。残り布を継ぎ接ぎしたエプロンである。古いTシャツのクジラの刺繍をくっつけてみた。

 市から8回めのコロナワクチン接種券が届く。この冬用とのこと。前回から3ヶ月後ということで、11月ごろからになるが、どうするかなあ。