夜の秋

映画『東京家族』を観る

 2013年製作、山田洋次監督。ご存知『東京物語』のリメイク版である。設定やストーリーなど大筋で『東京物語』を踏まえている。今の時代の普遍的家族物語という面もあって、なかなかよかった。

 ただ、『東京物語』とは明らかに差がある。老いに受動的な時代と、現代の違いだろうか。現実を納得して受け入れている笠の父親と、受け入れられない橋爪の父親。笠の父親像には、そこはかとない哀しみが感じられて、それが物語に深みをもたらしていた。

 「それでも、わたしらはそこそこいい方ではないか」という呟きも、戦争という大きな災禍を乗り越えてきた笠夫婦がつぶやいてこそ重みがある。

 ともかく名作のリメイクというのは、なかなか難しいものだと思う。

 八月になって、恒例にしている「戦争文学」を読まなければ。今年は何にするかと思案し、Tの書架から大岡昇平を出してきた。いろいろあったが、あまり凄惨なのはいやだから『ある補充兵の戦い』にする。

 うちは昼食時にNHK+で「ワールドニュース」を見ているのだが、毎日のように戦争のニュースである。ウクライナとロシアに最近はニジェールか、重いニュースばかりだ。平和はいい。ともかく平和は大事。

 少し早いが盆に備えて墓掃除をしてきた。酷く暑いので、いい加減手抜きの掃除である。先日行った時も今回も、花筒にアマガエル殿が入っていた。毎回いるので、父か母かと思ったが(?)水をかけておひきとりいただいた。

 

 

 

        湯上がりに足の爪切る夜の秋

 

 

 

紫紺ノボタン