『Nさんの机で』 佐伯 一麦著
作家生活三十年めにしてオーダーメイドで机をこしらえられたという。楢材の堅牢な机らしい。その机に向かい、物にからめながら来し方を振り返ったエッセイ。
世間の不条理にハリネズミのように挑みながら、自分の生き方を模索していた『ア・ルース・ボーイ』の青年。彼の行く末を見守らんと密かに応援をしてきたが、今や押しも押されもせぬ大家となられた。取り上げられるもののいくつかは、大家らしいこだわりもある。
私小説の作家が私生活に満足したとき、何を書くのだろう。『山海記』以来、作品を読んでいない。
書を膝に舟漕ぐばかり春の雨
日曜日は、県議会議員の選挙日である。父が長い間選挙の要職にあったせいで、棄権は悪と思い込まされてきた。妥協しても大抵は投票するひとがあったが、今回ばかりは困った。今年秋には選挙権を得る下の孫も、若者が入れたくなるひとが出てほしいといっていたが、トシヨリも同感。全く何をされているのか見えてこないが、立派に豪邸だけは建った。