遅き日

『猫を棄てる』 村上 春樹著

 上手い文体だというので、Tから回してもらう。かかりつけ医の待合室ですらすらと読めた詩のような小冊。

 過日読んだのが娘たちが書いた父親なら、これは息子の書く、父親との和解の話。父親から受け取った命の連鎖を確かめるもので、誰にとっても、親たちの出会いがなければ、生を受けることもなかった自分を振り返る話でもある。

 あたりまえの因縁だが、しみじみ考えると不思議な思いにさせられるもので、反発した親の歴史もまた、「意識の内側で、あるいはまた無意識の内側で、温もりを持つ生きた血となって流れ、次の世代へと否応なく持ち運ばれていくもの」にちがいない。

 当代人気の村上春樹だが、『ノルウェーの森』と紀行文しか読んだことがない。Tに言わせれば翻訳が秀逸だというので、いずれは読もうと思う。確かに文章はいいのだから。

 

 三ヶ月に一回の血液検査の結果を聞きに行く。去年悪かった膵臓の数値も、腫瘍マーカーも問題なし。老化は別にして体調はいい。トシヨリにしては意欲的にやっている方だと自賛する(笑)。

 

 

 

       遅き日や歩き疲れて着く宿り

 

 

 

うちのカバープランツのハナニラももうおしまい。今日は牡丹がひと花咲いた。