花は葉に

映画『家族を想うとき』 ケン・ローチ監督

 雨なので外仕事もできず、この冬11回目のマーマレード作りをする。ひとさまに押し付けたり、冷凍にしたりと作りに作ったが、多分これが最後。もう木にはいくつもなっていない。1回ごとに大ぶりを4個ずつ使ったのだが、それでもなった何分の一か、今になると甘味も増して美味しいのだが、皮をむくのが大変で敬遠される。うちの辺りには結構甘夏があるのだが、落ちるに任せているか、ダンボールに「お好きなだけどうぞ」と出してあるかにしても、はけるようにはみえない。

 さて映画だが、社会派監督らしく最後まで救いがなくて、辛かった。

 主人公のリッキーはマイホームの夢をかなえるために個人宅配ドライバーとして配送業者と契約をする。車も自分持ちで、初期投資のために借金もする。個人事業主で自由かと思えば大間違い、配送業者に時間も荷物も管理され、ロスや失敗はすべて賠償の対象だ。

 妻アビーはパートタイムの介護福祉士。夫の初期投資のために車を手放し、バスで顧客廻りだ。思いやりの深い介護士だが、終日働きづめ。そして子どもたちの問題行動。父母が忙しく家族時間が持てない中で、家族の思いはばらばらになっていく。

 最後はならず者に怪我をさせられ、大怪我をしたリッキーが、それでも働きに出かけようとするのを妻と息子が止める場面。「もう一度昔の家族に」と叫ぶ息子(それまで問題行動ばかりだったのに)の言葉に救いを感じたが、それを振り切って出かけたリッキーは果たして救われるだろうか。

イギリスの労働者問題はブレイディみかこさんの本でも読んだが、日本以上に問題は深いようだ。スナクという大富豪出身の緊縮財政派首相がどういう政治を行うのか、他人事ながら気にかかる映画だった。

 

 昨日の新聞で朝日新聞の値上げが発表されていた。新聞購読者の減少に歯止めがかからない現状では仕方がないが、中部三県では夕刊が廃止されるというのは、少なからずショックだった。ペラペラの夕刊とはいえ、最近では曜日ごとに映画、音楽、文学などの特集もあったのに。否、そういうことではないかもしれない。トシヨリが慣れ親しんだ習慣が、こんな田舎でも壊れていくということかもしれない。

 

 

      いつの間に空き家なりしか花は葉に

 

 

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