おしろい花

『麦の冒険』 佐伯 一麦著

 前にも触れたことがあるが、私はこの人の文章が好きだ。文章を通して感じられる人柄も気に入っている。と言ってもまだ小説は読んだわけではなく(「山海記」というのはどのジャンルだろう)今度も旅の随筆集だ。

 「山の子」「海の子」という言い方に倣えば、自分は「川の子」だという筆者だから、川にまつわる話も多かったが、樹木が好きだと言うだけあって木々の名前もたくさん出てきた。どの話を読んでいても爽やかな自然の風が感じられたのは、そのせいかもしれない。

 コロナ一辺倒の世界になって逼塞して一年以上。田舎住まいだから、まだまだましとは言うものの旅をしたい気持ちは強い。

 暇にまかせて、「紙上旅行」というものをやってみた。まずネットの「路線情報」で行き先までの時刻と乗り換えや乗車賃を調べる。駅ではレンタカーを頼もう。そうそう行き先は岡山。いつも乗り継ぎに降りるばかりで、街の訪問は高校の修学旅行以来となるはずだ。一日目は吉備津神社吉備津彦神社、備前国分寺、二つの古墳、楯突墳丘墓と欲張って廻って倉敷で投宿。二日目はゆっくりと大原美術館を鑑賞する。夕方倉敷を出れば、20時には帰宅できる。

 元気な頃と違って、そんな欲張り日程は到底無理かも知れないと思いながら、トシヨリには逼塞の一年は大きなあと痛感する。

 

 

 

 

     箪笥屋のけいちやんてふ子おしろい花

 

 

 

 おしろい花は、けいちゃんの家の用水の辺りにいっぱい咲いていた。けいちゃんは一つ上でお人形さんの服を作るのがとても上手だった。おじさんは箪笥屋で、家の座敷にあるでっかい無骨な座敷机はおじさんの作品だ。みっちゃん、すうちゃん、よしこちゃん亡くなった子もいるけれど、きっとみんなバアサンになったよね。

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