開戦日

イリノイ遠景近景』 藤本 和子著

 今月に入っていっぺんに寒くなり、すっかり縮こまった暮らしになってしまった。半日はそれなりにすべきこともあって動き廻るのだが、午後はほとんど固まっている。テレビを見る習慣がないので、大抵は読書なのだが、これといって感覚に響く本との出会いがない。

 上記の本はTが出してくれたもので、未知の筆者だったが、文章のうまさで読ませられた。聞き書きと言うか、聞かれている人の語りの部分がうまい。

 かって中国からアメリカに移住してきた人々が、迫害されたこと、大陸横断鉄道敷設労働に携わったことなどは、この本で初めて知った。先住アメリカ人のインディアンの話などもやはり初めて知ることばかりで、彼らの制作する陶器や砂絵や織物などといったものを画像検索するのは私流の読み方だ。事事さように彼女の目は歴史や社会の本流から外れた人々に注がれているようで、そこに彼女の意志と思想が感じられた。

 Tは同筆者翻訳の『チャイナ・メン』を出してくれたが、ちょっとこれは読めるかどうか。

 

 

 

       新聞のすみに小さく開戦日