十二月

『レールの向こう』 大城 立裕著

『老年文学傑作選』 駒田 信二編

 どちらも私小説風の老人文学である。したがって読後もいっこうに意気があがらぬ。上記は過日読んだ『あなた』と同じ作者。川端賞の表題作は、脳梗塞を患った妻に付きそう日々と亡き友への気持ちを書いたもの。もうひとつ私小説として自身の入院中の話。あとはフィクションで沖縄色の濃いもの。

 下記は以前半分読んで取り上げたことのある本で、(以前は多田尋子の『凪』について書いた)今回は耕治人『そうかもしれない』。

 さて、同じ老人の闘病記でも、受け取る重苦しさは随分と違う。大城さんは経済的に余裕もあり、何よりも親身に世話をされるお子さんに恵まれている。一方耕さんは連れ合いと二人きり。その連れ合いが認知症を発症され、施設に預けての入院なのだ。題名の『そうかもしれない』は、目の前の男性を、「ご主人ですよ」と教えられての、応えだ。「そうかもしれない」とそっけないが、相手の涙ながらの鼻みずに、鼻紙をわたそうとするのは、身についた老妻の習いにちがいない。哀しいエピソードだ。

 あーあーもうちょっと軽快な明るい話を読みたい。「なんか面白い本ない?」ってTに言ったら「面白い本なんてありません」と言われたが、一冊貸してくれたので、まずはそれを。

 

 どこもそうだと思うが、十二月になっていっぺんに寒くなった。昨日は伊吹山も初冠雪である。例年よりはかなり遅いということだ。庭の寒さに弱い鉢物などは、みんな室内に取り込んだ。だんだんと冬ざれてくる。

 

 

 

         十二月灯ともして来る郵便屋

 

 

 

陽だまりの蝶