茄子苗

『よもやま邪馬台国』 豊田 滋通著

 図書館の新刊棚に待っていたように残っていた本。Tは「いまさら邪馬台国なぞ、だれも関心ないんや」と言うのだが、私には実に面白かった。筆者はジャーナリストでこの本も、新聞連載記事の書籍化本らしくとてもわかりやすい。「よもやま」とあるだけに、邪馬台国周辺の古代史についての網羅的な解説書で、知識の整理にもなり勉強にもなった。

その1は、弥生時代後期(2C後半)から卑弥呼の時代(3C前半)ごろまでのこの国の様子である。倭人伝にも「倭国乱れて相攻伐」とあるが独自な墳墓をもった有力な首長集団が、各地に勢力を誇っていたという事実である。九州はもとより、出雲、丹波、吉備、越、ヤマトなどなど。本に紹介された墳墓の発掘記録を検索すると、どこの王墓にも交易によるみごとな副葬品がおさめられており、海を越えて交易をおこなっていたのは、邪馬台国だけではなかった。

その2、では邪馬台国はどこかだが、やはりこの問題に決定打はない。巻向遺跡の発掘で畿内説が有力になっているらしいが、北九州の弥生時代中期後半から古墳時代前期の豊富な遺跡群とその出土品には及ぶべくもない。筆者は「北部九州連合」とも言うべきものを統率したのが「女王国」すなわち「邪馬台国」ではなかったかと推測しておられる。が、「邪馬台国」が北部九州地域として、卑弥呼の死(248)より半世紀後、ヤマト(邪馬台)の地にヤマト王権というものが台頭、巨大古墳を築くのもまた不思議な話だ。

 

 

 

 

      茄子苗や優しき雨の降り始む

 

 茄子、胡瓜、トマト、西瓜、とうもろこし、ピーマン、万願寺、ゴーヤ、枝豆・・・畑には夏野菜の苗が出揃った。今日は午後より静かな雨。