グラジオラス

世界遺産 宗像・沖ノ島』 佐藤信・溝口孝司(編)

 宗像・沖ノ島遺跡は平成29年世界遺産に登録された。沖ノ島の祭祀遺跡のみならず、大島の中津宮、九州本土の辺津宮、宗像一族の新原・奴山古墳群も合わせての登録である。沖ノ島は宗像から57キロも沖合にある孤島で、太古より玄界灘を航海する際の重要な目印であったらしい。航海の安全を祈り、この島に神の存在を見出した人々が、篤い信仰を寄せてきたこともよく知られたことであり、今でも厳格な禁忌に護られた島だ。近年少しずつ調査が行われ、22の遺跡がその立地により四段階に遷り変わることがわかってきた。4C以来鏡から始まり、玉類・金銅製馬具・壺類などなど約8万点もの奉献品が、すべて国宝だというのも驚くべきことだ。

 この出土品を一度は宗像大社神宝館で、一度は九州国立博物館で見たが、それは見事なものであった。中でも女神(タゴリヒメ)に捧げられたと思われる純金製の指輪は花文のデザインで1500年前のものとは思えぬ輝きを放っていた。

 この本によれば、荒波を越えて海を渡ったのは、首長といわれる人たちの交流だけでなく、交易を望んだ人々(商人)も多かったようで、彼らの入手したいものの一番は鉄であったという。朝鮮半島西・南海岸に見られる倭系古墳が、彼らの存在を語っているらしい。

 Tによれば、中沢さんは「日本人のルーツは海洋民族だ」と言われているらしいが、海は「開かれた窓」で、決して障壁ではなかったのだろう。しかし、恐ろしいものでもあったゆえに篤い信仰が生まれたのだと思う。

 

 

      グラジオラス家ありしこと記憶せり

 

  オーブンレンジが壊れた。27年間使ってきたものだ。お知らせブザーがささやくほど小さくなっても、働き続けた。「つくも神」が付いてるかもしれないというので、念入りにお礼を言った。今日買ったのが同じように働き続ければ、当方の命を越えることになりそうだ。

27年間ありがとう