薄暑

空海展』に行く

 『空海展』のため奈良まで出かけた。ほとんど高速道路利用で2時間半かかる。実際は途中での休憩も含めると3時間。奈良には11時ごろに到着。奈良公園周辺は去年の秋以来だが、相変わらず外国からの観光客でいっぱいだ。以前より鹿がおとなしいように感じたが、何か対策がされているのだろうか。

奈良国立博物館の旧館

 『空海展』は思った以上の人出である。旧館入り口から入ったので案外スムーズだったが、新館の入場券売り場は長蛇の列。当然ながら会場内も大混雑で、慌ててマスクを付ける。照明が暗いうえに、人の肩越しでの鑑賞が多く、見にくい。家族ともはぐれないように気をつけねばならないし、なかなか大変だった。展示品に合掌しておられる方もあり、今更ながらお大師さんの人気に驚いたことだ。

 国宝も何点かあったが、絹や紙に書かれたお経や文書・図像が多く、展示物としては地味である。中でも印象に残ったのは空海ではなく、最澄の書であったというのは皮肉というしかない。最澄の書簡というので、立ち止まる人が少なかったせいもある。

 最澄筆『久隔帖 きゅうかくじょう』は現存する唯一の最澄自筆の書状で弟子の泰範に宛てたものだ。最澄と泰範と空海の複雑な関係は、司馬さんの『空海の風景』で詳しく読んだことがあり、格別な思いで、見入る。空海の書の堂々たる力強さにくらべると、優しい。司馬さんは「措辞、文意ともに、いかにも最澄のきまじめさと謙虚さがよくあらわれている」と書いておられたが、まさにそんな感じのする書状だ。

 『空海展』の混雑を抜け出して、旧館の常設展示へ。仏様もお一人お一人訪ねて拝観すると、ありがたいものだが、ずらりと並べられると鑑賞の対象となってしまう。

 ロビーと思われる大部屋に去年出かけた吉野金剛峯寺の仁王像が展示されていた。仁王門が修理中の間こちらに避難されているようだ。こんなに大きかったのかと驚く。

 折角奈良まで来たのだからという気もあったが、無理はできない。昼餉をとり、帰途へ。

 

 たまたま名神高速はリニューアル工事中で、難儀をする。往きも多少渋滞したが、復路は草津辺りから速度規制でちっとも進まぬ。滋賀の味噌が欲しかったこともあり、彦根ICで下り、琵琶湖畔の「道の駅母の郷」へ寄る。味噌やら夕餉用の寿司やら野菜を買って、高速を使わずに帰る。柏原宿あたりの美しい田園風景が見られたが、夕方の渋滞に巻き込まれて2時間もかかってしまった。

霞む琵琶湖

 

 

        お大師を恋ふ人あまた薄暑かな