薄暑光

武家の女性』 山川 菊栄著

 先月、自分の書棚の半分ほどを始末したのだが、大した本もなかったせいで買い取り金は千円札一枚と少々。そのお金で買ってきたのが、この本ともう一冊パレスチナの作家のもの。

 昔高校生の頃、この本を薦めてくれた友人がいた。姉さんがK政党のシンパで、彼女もかなり政治的だったせいかもしれぬ。山川菊栄が、女性運動の理論家と知ってだったのかなあと、そんなことを思い出したりしたが、当時はちっとも読みたいと思わなかった。が、今になるとなかなか興味深い。

 ちなみに今日の新聞によれば、日本のジェンダー指数は118位だそうで、江戸の頃からどれほど進歩したのだろう。女性が世の中の流れの本質から離れているという点では今も変わりはないのかもしれぬ。ここに出てくる女たちは女だからと軽んじられ、ことの成り行きも知らされず、窮屈で悲惨な暮らしを強いられているが、女だから粛清を免れ、生き延びた利点もあったようだ。幕末の水戸藩の話だけに、壮絶な殺し合いは男ならば幼子にまで及んだが、女たちは逆境でも慎ましくも決然と生ききった様子に今の時代にない力強さを感じる。

 樋口一葉が歌を習ったという「萩の舎」のお師匠さん中島歌子女史の前半生などは興味がわく話で、朝井まかてさんの小説もあるようだから読んでみようか。

 筆者の山川菊栄女史は女性運動の先駆的理論指導者ということだが、不明であり恥しい。

 芳賀徹氏が山川氏への敬意と好意を寄せている「あとがき」の文章がとても好ましい。

 

 

        薄暑光風の愛撫とささやきと

 

 

 連日30度越えの暑さだが、まだ風の涼しさに耐えられる。縁側の椅子で風に吹かれて本を読んでいると、すずめが遊んでいるのを目にする。ちょんちょんと来てふいに百合の枝を揺すったり、脈絡もなく芙蓉の茂みを潜ったりと、遊んでいるとしかみえない。