白日傘

縄文土器を見にゆく

 神社仏閣か美術鑑賞、はたまた歴史探索、うちが出かけるのは、たいていそのいずれかだ。「縄文土器」を見に行く、今回の目当ては、それに尽きる。

 そして、期待は裏切られずに、むしろ期待以上だった。縄文人という、遥かな祖先に深い愛しみと尊敬の念すら覚えた。

井戸尻考古博物館

 信州の八ヶ岳南麓、縄文時代中期に一千年にわたって花ひらいた縄文文化圏があった。富士見町の井戸尻考古博物館には、当地の発掘された耕作用の石器や土器が豊富に保存されている。現代ものと、形状や用途がよく似ている石器類も驚かされるが、何と言っても見応えのあるのは土器類である。

 深鉢も浅鉢も有孔鍔付土器(酒造器だとみられる)も出ているが、どれも見事に独創的な装飾土器である。蛙か半人半蛙のような文様が多い。大きなふたつの目玉を持ち、三本指。嬰児の顔を取り付けたものやマムシと思われる蛇の文様もある。

 蛙や蛇や嬰児の文様がなぜ多いのか。よくはわからないが、蛙は月を象徴し、満ちては欠け、永遠につづく死と再生の意味があるらしい。

 小ぶりの土偶もある。背に複雑な文様が描かれ、この文様を辿ることで共通した文化圏をつかむことができるという。

三分一湧水

 井戸尻考古博物館の縄文土器にすっかり魅了されてしまって、興奮覚めやらぬ頭で八ヶ岳南麓の別荘地帯を走り、「三分一湧水」へ。実に外の気温は30度超えで、木陰に涼を求めたせいもある。ここは貴重な湧水を三つの方向に分水する施設で、最初の発案者は武田信玄とのこと。

北杜市考古資料館

 少し奥まった山懐に新しくできたらしい考古資料館。驚いたのはここにあの有名な「出産土器」があったことだ。いろいろな資料集などで写真が引用されるたびに、「山梨県」とあったのは知っていたが、まさかここで会えるとは、またまた大興奮である。こちらは撮影可だったので、写させて頂いたが、採光が反射してうまくいかなかった。土器の腹部から嬰児が顔を出しているのがわかるだろうか。

 大きな眼窩に蛸のように口を尖らせた土偶もあった。まるで宇宙人ではないか。これなんぞは当方のシンボルマークにしようかと思うのだが。

 

ハーモ美術館

 ここからは二日目(今日)である。半分心がけが良くないのか、このところ二日目は雨が多い。帰る前に少しだけと、諏訪湖畔の「ハーモ美術館」による。ダリ、マチス、ルソー、ジャガール、ミロ、藤田、荻須と見どころ多し。Tに教えられてはじめて知ったグランマ・モーゼスの素朴さが良かった。

岡谷美術考古資料館

 ここは予定外の訪問。朝の地域のテレビニュースで、この美術館での展覧会を紹介しており、帰り道なので寄る。ところがここにも思わぬ縄文土器。満腹になるほど今回は縄文土器を見た。

 しかし、これぞというものが、撮影不可だったり、うまく撮れていなかったりと、面白味が紹介しきれないのが残念。

帰りはかなりの雨の中を帰宅となる。やっと帰ってひと息ついたら雨があがったという皮肉は、やはりこころがけのせいかしらん。

 

 

 

          陽は高し芝生を過る白日傘