着ぶくれ

ヘルシンキ生活の練習』  朴 沙羅著

 ずいぶん前に新聞の読書欄で気になり、メモをしておいたものだ。県の図書館で見つけて借りてきてもらう。

 多少困難があっても、積極的によその国にでていこうという若い人の話を読むのは楽しい。この本の朴さんも二人の子連れ(二歳と六歳)であり、理解のありそうな旦那さまもいらっしゃる。だから、なにも無理をしなくてもと思いがちなのだが、いやいやどうしてチャンスがあれば、よその国では働いてみよう、よその国を面白がってみようというのは、いいですねぇ。

 フィンランドって幸福度世界一なんですって。まあ、それもさまざまな数値の総合で、日本語の「幸福」というのとは少し違うようだ。ただ「ジェンダーギャップ指数」は世界二位。そういえばトップも女性。閣僚もずらりと女性。一方男性には兵役が義務付けられているというのも初めて知った。税金がめっぽう高いようだが、「公的サービスが広く薄く行き渡っている」らしい。そういう福祉サービスの敷居の低さは、知り合いのない土地で子育てに奮闘する彼女には、とても助かったようだ。

 幼児期にいろいろなスキルを身に付けさせるという考え方には感心した。例えば子供どうしの「仲間はずれ」のような場合でも、注意とか、叱るとかという対処ではない。人形を使って「一人で遊びたいときや友達と遊びたいときに何を言いどう振る舞えばいいか、などの練習」をするのだ。これは、筆者も嬉しい驚きであったと書いていたが、こういう発想はなかったなあと思う。

 フィンランドでは「教員のマニュアルで人格を評価してはいけないことになっている」らしい。人格や才能は持って生まれたものだが、スキルはいつでも伸ばすことができる。生き方としてスキルを学ばせるか、なるほどなあ。

 国家への信頼という点で、コロナ関連の政策の日本との比較が書かれていたが、日本の方が、満足度が低い。人口あたりの死者数や金銭的手当などはよほど日本の方がいいように思えるのにだ。日本の閉塞感はいったい何に起因するのか、これは筆者の疑問でもある。

 ブレイディみかこさんの息子さんにも感心したが、いつも自分なりに考えている筆者のユキちゃんにも感心する。先が楽しみだ。

 

 フィンランドでは「適切な服装をすれば、天気が悪いなどということはない」と言うそうだ。厳しい冬を持つ国らしい。そんなフィンランドから見れば、この程度の寒さに縮こまっているのは笑止千万かもしれない。しかし、終日日差しがなくて、今日も寒い。明日、明後日多少緩みそうだから、いよいよ年越し仕事をしなければ。

 

 

         着ぶくれし親を笑ひし我の老い

 

 

 

氷解けず