冬に入る

『市場界隈』 橋本 倫史著

 沖縄の旅の最終章、那覇空港の本屋さんで購入した。那覇市第一牧志公設市場界隈の人々に取材して紹介した本である。

「1950年に牧志公設市場が開設された。現在の建物は1972年に建設されたものだが、老朽化が進み、2019年に建て替え工事が行われることになったのだ。」

1972年とはまさに沖縄が日本に返還された年。そして2019年はまさに今年。この間の沖縄の歴史を聞いておかねば「現在の風景は過去のものになってしまう。」筆者の突き動かされるような思いがこの市場界隈の人々のつい昨日までの肉声を伝えてくれている。

 それにしてもここに登場する人々のなんとエネルギッシュなことか。皆さん当方と同年代にもかかわらず終日店に立ち、まだまだ意気盛んなのである。残念なことに本を手にしたのが旅の後であったからお店で顔を拝見することはなかったけれど撮ってきた写真にはしっかりと屋号などが写っていたりするので、新規になった仮設市場の方で相変わらず奮闘されていることだろう。

 今年の6月16日で営業を終えた旧第一牧志は写真のとおりガランとした寂しさでそれゆえに老朽化もかなり目立つ。新しい市場は2022年春に完成するというが、どんな市場になるのか。おそらく戦後の闇市から始まったと言われる混沌とした市場界隈がスマートに変身するのは間違いないだろうと思う。

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       行く夜汽車窓ながながと冬に入る

 

 

 

 

市場界隈 那覇市第一牧志市場界隈の人々

市場界隈 那覇市第一牧志市場界隈の人々