西瓜

『平成遺産』

 八人の著者による平成オムニバス。あまりおもしろくなかったから一頁よんで止めた人もいたが読み通したなかでブレイディみかこさんの「ロスジェネを救え?いや、救ってもらえ」はちょっと考えさせられたので触れておきたい。

 みかこさんはイギリス在住なので「平成」という括りには詳しくないと断りながら年ごとの「流行語大賞」を手がかりに話を進める。

 平成21年の「派遣切り」とか「年越し派遣村」とかを手がかりにこの年こそ「経済的には致命的なクルーシャルだったように見える」と書いている。そしてこの年は政権交代のあった年でもあり、いわば時代が変わるという高揚感とは裏腹に不況感の色濃い言葉が選ばれたことにも触れ、この政権によってなされた「事業仕分け」などは不況に油を注ぐものだったのではないかと言っている。彼女は緊縮財政に異議を唱える人であるから経済に疎い身はそういうものかと思うしかないが、一時は「事業仕分け」に拍手をした身にとっては複雑な話だ。

 ロスジェネ世代というのはバブル崩壊後の就職氷河期と重なった世代で派遣や契約社員など不安定な雇用を余儀なくされた年代層をいう。若いうちにきちんと就職できなかったので貧困に苦しむ人が多い。「この層を支援し、彼らに社会を助けてもらうための投資を国が大々的に行えばいい」つまりロスジェネ世代を救う政策を打つことがこの国の縮小状態を改善する一助になるのではないかというのがというのが表題の意味である。

 そんなお金はない?いやお金はありますよと彼女。あんなに「国の借金、借金」と言われたていたのは財務省プロパガンダだなんて。去年の10月にIMFが発表した資料では日本のバランスシートは負債と資産がほぼ同額でプラスマイナスゼロだというのだ。この資料は日本のマスコミには無視されたらしいが「借金、借金」と煽ってきただけに都合が悪かったのだろうか。

 はてさて、私はいつも都合よく騙されてきた愚衆のひとりだったようだ。「こりゃ経済を勉強しなきゃ」とTに言ったら、「そりゃちょっと難しいよ」と笑われた。

 

 

 

 

         五分にて当落決定西瓜切る

 

 

 

 

平成遺産

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