もやし独活

 「生と死の光景」 講談社文芸文庫
 12の短編小説を収録。印象が強かった作品はまず島比呂志「奇妙な国」日本列島の中に滅亡を大理想とする小国が存在するという設定で、読み始めはSFかと勘違いをした。筆者の来歴からハンセン病強制収容所を描いているとわかり迂闊さを恥じた。諧謔的な語り口だが主題は重い。その他の作品。死に近づきつつある老人の心情を描いたものがいくつか。すべて男のせいか同じ老人でも共感するところがなかった。考えてみると、媼のその類のものは読んだ覚えがない。嬉々として死に向かっていった「楢山節考」のおりん婆さんぐらいだ。こちらが知らないだけか、なにか男女の違いがあるのか。


     もやし独活をのこ存外弱きもの



戦後短篇小説再発見5 生と死の光景 (講談社文芸文庫)

戦後短篇小説再発見5 生と死の光景 (講談社文芸文庫)