映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』 信友 直子監督・撮影・語り
85歳で認知症の症状がでだした母を、95歳の父が面倒をみる。それをひとり娘が記録した家族のものがたりである。
新潮社のウエブサイト「考える人」で村井理子さんが絶賛していたので、U-NEXTで観る。
哀しいけれど温かい作品。
お母さんの不調に慌てず騒がずいつもにこにことされてるお父さんが素晴らしい。95歳だから腰も曲がり足取りも覚束ないのに、買い物に出かけ、洗濯や掃除もこなし、妻の布団の襟カバーもつけかえてやる。それがちっとも押し付けがましくない。見かねて「帰ってこようか」という娘に、「わしがやる。あんたはあんたの仕事をしんさい」と、迷いがない。何でも本当は文学の道を志したかったのに、戦争でできなかったとか。今も新聞や本を丁寧に読み、切り抜きが習慣のようだ。
娘には好きな道を思いっきり歩んでほしいとの思いが溢れている。
穏やかなお父さんが一度だけ怒った場面があった。迷惑を掛けるばかりだから死にたい死にたいと、お母さんが繰り返した時だ。「そんなに死にたければ死ね」と一喝、「自尊心が強すぎる、我が強いんや」と嘆くのは、世話になるしか仕方がないのを素直に受け入れよということか。
お母さんの気持ちも、お父さんの苛立ちもよく分かり、切ない。
このドキュメンタリー映画は続編があるらしい。U-NEXTではまだ視聴できないので、書籍化された本を図書館に見つけ、予約した。
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膝ついて草ぬく媼下萌ゆる
迎春花
三寒四温か、暖かくなったと思えば、また寒くなる。それでも庭すみにいくつかの蕗の薹が顔をだした。早速摘んで蕗味噌に。春のかおりを味わう。