梅ふふむ

『嫌われた監督』  鈴木 忠平著

 華々しい落合時代をまざまざと思い出した。8年間で4度のリーグ優勝と日本一1度。ファンにとって、ことに忘れられないのは、2007年の日本一。末席ファンでも興奮覚めやらず、勢いに任せて、勝手な優勝記念としてマッサージ機を購入した。

 「一番のファンサービスは勝つことだ」と公言した落合さんの言葉通り、10年間でAクラスは一度しかない今のチームには、ほとんど興味がわかない。

 優勝監督を解任したのはなぜか。オレ流という監督のやり方への不満なのか、一体なんだと世間も騒ぎ、ファンも気をもんだ、それがやっと判明した。

 球団経営上の金銭問題だという。つまり勝ち続けることで、選手や監督の年俸の高騰に球団が耐えられなくなったということらしい。今や新聞社は斜陽産業だ。説得力のある説明だが、そうであれば、これからも中日の連勝は望むべくもない。選手、監督云々より球団の身売りを考えた方がよさそうだ。

 さて、落合という人だが、確かにひとつの「哲学」をもった指導者だった。それを嫌いとか好きとか勝ちにこだわりすぎるとか、面白くない野球とかいろいろあるだろうが、結果は認めざるを得ないものであった。なによりファンにとっては夢を叶えてくれた監督だった。

「俺がほんとうに評価されるのは俺が死んでからなんだろうな」と嘆いたともあるが、いやいやどうして、確固たる評価が最近の活躍の証ではないか。この本にしてからベストセラーを記録し、ノンフィクション部門の三冠となったという。

 今年もあとひと月少々でペナントレースが始まる。去年最下位の当該球団は、今年はどうであろうか。子供の頃からのファンだったらしい連れ合いは、裏切られても裏切られても期待をやめない。そういう熱心なファンをぜひとも球団の裏事情で裏切らないでほしいものだ。

 

 

      伐採といふ死もありぬ梅ふふむ

 

 

 町内を分断して広い道路が造られるということは、前にも書いた。中央分離帯のある道路で、信号のあるところしか横断できない。いつごろ着工になるのか知らないが、既に地権者には金が払われたとのうわさだ。最近、予定地にある借家が取り壊された。やはり予定地に植えられていた梅やカリンやサザンカの木がスッパリと伐採された。今に咲こうとするつぼみのままに、だ。

 相変わらず「道路、道路」でうんざり。川沿いの散歩道もなくなると嘆いたら、「できる頃には施設に入っとるで、心配ないって」と、近所のじいさんに言われた。「施設?入るつもりはありません」と断言したいが、先のことはわからない。余計なことはいわず、笑ってうけながした。

けなげにも一番に咲いた黄水仙