ビール

昔がたりをする。

 地方版に「戦争を語る」というコラムが不定期で掲載されている。先日、隣町の95歳の男性の体験談を読んでいて、名前に聞き覚えのあるような気がした。戦後、高校教師になったというくだりを読んで、はたと思い出し、旧友にメールをする。

 その日の午後、彼女から電話があって、当然ながら昔話となる。そして、くだんの人はやはり国語の先生だったということになった。

「あの当時の先生というのは随分個性派ぞろいだったわね」

と彼女。確かにいい意味で個性的でリベラルだった。それで一年生の担任だったS先生の話となる。入学して、いきなり推薦図書と黒板に書かれたのが、『鋼鉄はいかに鍛えられたか』だ。『車輪の下』もあったような気がするが、確かでない。

「あなた、あれ読んだ」「読んだわよ」「Kちゃんも読んだかしらん」

内容は、もうすっかり忘れてしまったが、田舎でぼんやり育った15歳には刺激的な推薦図書であった。が、まだ戦後の明るい息吹が残っていた時代だったということでもあるだろう。

 

 「このごろよく連絡しあっているね」とTに言われた。共通の過去が、空白の時間を一挙に縮めるらしい。後期高齢者のバアサン二人が、青臭い女学生に舞い戻って、気炎をあげている。

 

 BS映画『レインマン』を録画して観る。ダスティン・ホフマンの兄とトム・クルーズの弟。いくつかの賞に輝いた感動作品らしい。自閉症の兄を演じたダスティン・ホフマンの演技は素晴らしかったが、ストーリーにはあまり感動しなかった。障害者を扱った作品なら、前回観た『ギルバート・グレイブ』のほうが深みがあった。

 いよいよ梅雨入り。静かに読書をし、縫い物でもしよう。

 

 

 

  

        青春の日を語り合ひビール酌む