木の葉掻く

俳諧辻詩集』 辻 征夫著

 アマゾンで一円で購入。もちろん送料は別だ。なかなかいい本で、得した気持ち。俳句に詩が連動している。私はもっぱら俳諧味のある俳句に惹かれた。季節のせいか冬の俳句に感心する。

 床屋出てさてこれからの師走かな

 熱燗や子の耳朶をちょとつまむ

一番気に入ったのはこの二つ。男の句だなあと思う。こういうのは女ではできない。今どき正月だからといってまず床屋へ行くなんて言うのは古い男だ。ちなみに内の連れ合いは、年の瀬になると「床屋床屋」と煩い。床屋へ行って、さてその後はなにをするんですかね。結局は年忘れとか屁理屈つけて飲むんじゃないですか。

 熱燗をちんちんにつけて、「あつつつ」と徳利を取り上げた手を子の耳朶で冷やすなんて、これは庶民のお父ちゃんだね。

 おでん煮ゆはてはんぺんは何処かな

 あらあらお父ちゃん、鍋の中をそんなにかき回さないで。

もちろん寂しい真面目な句もいくつかあり。

 遠火事や少年の日の向こう傷

 行春やみんな知らないひとばかり

 冬の雨下駄箱にある父の下駄

詩情があるが、こういうのは真似できそうな気も。

古本なので「あとがき」に先の持ち主が引いたと思われる鉛筆の傍線が何本か。気になるので読み直してみたが、どういう意図で引いているのかちっともわからない引き方だった。

 

さて、この本といっしょに伊藤比呂美さんの『いつか死ぬ、それまで生きるわたしのお経』(これは新刊)を購入。これはじっくり読むしかない。 

 本日は終日時雨模様。連れ合いはボランティア先の餅つき大会。師走ですねえ。

 

 

 

 

     五十年(いそとせ)を共にありたり木の葉掻く

 

 

 

 

もう半世紀にもなる我が家の木蓮の大木。毎年この時期は落ち葉の始末が大変だ。今年も散り始めたが、全部散るまではまだまだ。

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