囀り

 昨日、あれから姉より電話が入った。着信履歴を見てかけてきたのだが、ちゃんとかけ方を忘れずにいた。ロビーに缶コーヒーを買いに行っていたらしい。同じ話が何度か出てくるが話の辻褄が合わないことはない。「もうなんにも考えないことにしたの。」と明るい。「寒くもないし、暑くもないし極楽だよ。」と言うから「今から極楽だと本当の極楽に行った時がっかりするんじゃない。」と返したらケラケラと笑っていた。ひとりの暗い部屋で修羅と化していた一時期を思えば、なんとありがたいことだろうか。孫のYとTのことを話たら、懐かしがって「みんなに会えないのが寂しい」と言う。「もう少し暖かくなったら、顔を見に行く。」と約束をして電話を切った。
 2・3日前のニュースで高齢の男性が認知症の妻を殺して自らも死を選ぶという痛ましい話があった。認知症問題は独りで抱え込まないことが大切だと思う。

     囀りに藪ふくらんでをりにけり