冬籠

「すごいトシヨリBOOK」   池内 紀著

 池内さんの文章が好きで随分いろいろ読んだが、これは肌いろが違う。あとがきを読むとどうやらテープ起こしをしたものらしい。だが、池内さんらしいところがないわけではない。例えばいろいろ記録をする、自分なりのルールを作る。記録はワインやせんべいのラベル集め、ホテルのコレクション、なによりも自らの老いの兆候というのもある。こちらも記録好きだから気持ちはわかるがそこまでは徹底していない。自らの老いをもとに薀蓄を語ったのがこの本なのだが、要は「成り行きに任せてこだわらない」ということ。眠れなければ眠れるときに眠ればよいし、病になれば苦痛がなくなる程度に治せばよい。老いて支障がでてくるのを悲劇に感じないで喜劇とみればよい等々。そして、ちょっとおしゃれをとは意外?ユニクロL.L.Beanがご贔屓のようで親しみがもてる。まあなんて言うこともない一冊でした。相変わらず人気はあるようで、借りてきたのは七刷版でした。そうそう池内さん77歳、5歳上です。

 

 

 

 

     田舎家を小さく住みて冬籠

 

 

 

 

筆初

「あと千回の晩飯」  山田風太郎

 食べられる夕飯はあと千回(だいたい三年)、「もう一食たりとも意に染まぬ晩飯は食わない」と思い立っての書き始めだったが、糖尿病を発病。病院食となる。なかなか思うようにはいかぬなかで、老残を数えたり死に方を考えたり。筆者、当時73歳から74歳。お亡くなりになる5年ほど前である。驚くほど不摂生な日常である。昼夜逆転の暮らしはともかく寝酒に一日でボトルの三分の一を空けたり、時にはコップ一杯の朝酒をきこしめしたり、よくよくこの程度の病状で済んできたとおもうばかりだ。ご本人も「今まで無事にすごしてきたのは僥倖だった」と病気と闘う気などはさらさらない。死神が来るまではと端から世の中を眺めておっしゃりたことを言う。そこが面白いといえば面白い。同年齢だがまだまだここまでの心境には遠いなと思いつつ読む。最近は平均寿命が伸びたせいか七十代でのこうした物言いは少ないのではないかしらん。寂聴さんも愛子さんも九十代である。いずれにしても「ついにくる道とはかねて聞きしかど・・・」が「老い」であるのは真実。最近こんな本ばかり共感して読んでいる、それがワタクシの現実。

 

 今日は二十四節気の「小寒」。本格的寒さの前触れである。今まででもじゅうぶん寒いのにこれ以上寒くなるのは閉口だ。

 

 

 

 

     落款の紅の華やぎ筆初

 

 

 

 

あと千回の晩飯 (朝日文庫)

あと千回の晩飯 (朝日文庫)

屠蘇

 娘一家が来訪して恒例の新年会。今年はこちらの体調を気遣って宿泊はせずに昼食会だけ。それでも乾杯をしておしゃべりをして新年らしい一日となる。

 歩いて初詣に出かけるというみんなを送り出し、留守番をしながらテレビをみる。以前読んだつばたさん夫妻のドキュメンタリー番組「人生フルーツ」が再放送されていた。落葉を拾い、畑に鋤きこみ、作物を収穫し、ものを手作りし、こつこつと繰り返されていく丁寧な暮らしぶり。カメラは修一さんの死も追い、独りになった英子さんのその後で終わる。もう90歳に近い英子さんだが「これからどう生きられますか」という希林さんの問いかけに、「これからも、人のためにも自分のためにも(修一さんとやってきたような暮らしぶりを)こつこつと繰り返していくしかないの」と答えられたのが心に残った。

 

 

 

 

     屠蘇を酌むしみじみ夫の長寿眉

 

 

 

 

 

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                 H殿の今年の作品

元日

  寒いのだが風はなく日差しはあり思ったよりよき年明け。今年もよろしくお願いします。賀状を読んだ友人より早速の電話。ブログをみても本ばかり読んでいるようだからと体調を気遣っての電話だ。心遣いが有り難い。

 明日は娘一家の訪問だが今日はこれといったことは何もないのでアマゾン配信の映画を見る。「センセイの鞄」。川上弘美さんの本を読んでからいつか映画も見たいと思っていた。

 抑制された大人の恋というか、しみじみとしたいい話だった。映画で目頭が熱くなったのはひさしぶりだ。

 

 

 

 

     なでられて尾をふる仔犬お元日

 

 

 

 

 

 

センセイの鞄 [DVD]

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除夜の鐘

なんやかやとあった今年も最終日。日記を繰ればとにかく体調不良に泣かされた一年でした。急に老いが近づいてきたようなやりきれなさ、ブログを書くことで何とか過ごすことが出来ました。拙い文章を読んで頂き本当にありがとうございました。来る年もどうぞよろしくお願いいたします。皆様よいお年をお迎えください。

 夫が友人宅で文旦を頂いてきました。実の周りが47センチもあります。こんな大きなものをのせる鏡餅はないので、これはこれだけでお飾りすることに。

 

 

 

 

   除夜の鐘襷かけたる背後より   竹下しづの女

 

 

 

 

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 昨日はこちらでも初積雪。朝方に降り出し見る見る間に積もった。報道では5センチとあるがそんなに積もったたようには思えない。最高気温が3・8度とかで終日かなり寒かった。おでんを仕込んで暖房の部屋を動かず。

 新聞の日曜版、今年の読書展望で様々な読書人が今年印象に残った本を3冊づつ上げているが知らない本ばかり。一冊だけ以前借りてきた本があったが(「暗い時代の人々」森みゆき著)時間切れで未読で返却してしまった。そう言えば高村薫著「土の記」も読みきれなくて挫折したのだが、大佛次郎賞を受賞した。友人から読んで「よかった」と聞いたので再挑戦しますか。

 今読んでいる本を加えて今年は総計92冊。但し中身が問題だが、バアサンとしてはまあまあかと思う。幸い目が大丈夫なだけは有り難い。印象に残ったのは林京子さんとか伊藤比呂美さん。

 昔の勤務仲間から電話あり。「ワハハ、ワハハ」と元気がいい。81歳になったと言う。ひとの歳を聞いて「あんた、まだそんなに若かったの。まだまだこれからやがねぇ。」とのたまう。ちょっと苦手な先輩だったが元気を貰った。

 

 

 

 

 

     おずおずと音動き出す雪の朝

 

 

 

 

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数え日

 今年も一週間を切ったが迎春準備は遅々として進まず。というよりやる気が湧かずというところ。昔は年内の勤務が終わって「さあ家のことを」と大忙しだった。あれもこれもと気ばかり焦りつい苛々。「年末はお母さんの機嫌が悪くなる」と家族は戦々恐々。こちらも今年こそは穏やかにと思うのだがなかなかそうもならず、という年月がどれほど続いたのだろう。今は数え日なのに陽だまりで読書。時々居眠りもしてトシヨリですねぇ。トシヨリには「成り行きに任せる」というのが一番いいみたいで。

 ネットに「蜜柑が高値」とありましたが我が家も今までにない不作。去年成らせすぎたようだ。お飾り用に三つあるかどうかといったところ。

 

 

 

 

     数え日やくりこしていく予定表

 

 

 

 

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