「狩りの時代」 津島 祐子著
 二月に亡くなった津島祐子さんの絶筆である。テーマは差別。ダウン症の兄を持った女性が主人公。世間に感じた息苦しさ、分かり合っているような身内にすらある偏見、ナチスが障害のある人々に貼り付けた「不適格者」という言葉にこだわった過去の追及、偏見と差別への津島さんの厳しい思いが主人公を通じて語られる。
 最近も重度障害者の人々の大量殺人という悲劇があったが、「差別」は間違っているというのは当然。自分は「差別」はしていないと誰もが思う。ところが、自分を省みても他人を見てもことはそんなに単純なものではないとつくづく思う。
 推敲の途中での逝去だったらしく、構成上付け足しがあるのではないかという気もするが、ずっしり重い読後感であった。




     父在りし頃たわたわと富有柿



狩りの時代

狩りの時代