桜桃忌

 昨夜はW杯がらみで就寝が遅くなった。サッカーの緊張感を伴う目まぐるしさには体力的についていけないと、蒲団の中で耳だけで応援していたのだが、勝利でついに起きだしてしまった。おかげで夜半すぎまでなかなか眠つかれなかったのはつらかった。

 幸い今日は終日の雨で、だらーとビデオに録った映画を見ることに。

2016年の是枝裕和監督の「海よりもまだ深く」。主演は阿部寛。「こんなはずじゃなかったと今を生きる家族」の話という。主人公はかって一度文学賞を受賞した栄光が忘れられない小説家。いまは取材と称して探偵稼業で身をすり減らし常に小金にも困っている。別れた妻子にも未練があるのだが養育費すら工面出来ない。そんな息子に樹木希林の母親が言う。「人生なんて単純なものなのよ。海よりも深く愛したことなんてだれもないけど、みんな楽しくやってるじゃない」と執着を捨てて今を大事に生きることの大切さを語る。それに対して主人公は息子に「パパはまだなりたかったものにはなれてない。でもなろうとする気持ちが大事なんだ」と話すのだ。

 何だか先の見えないやるせないような終わり方ではあったが母親も主人公もどちらの気持ちも肯うことができて、まあ人生なんてそんなものですねぇというしみじみした感慨。是枝さんの「歩いても歩いても」もよかったがこの作品もよかった。

 

 

 

 

     桜桃忌樋ほとばしる雨の音

 

                  昨日19日 桜桃忌