実南天

 ベストの後身頃がようやく編み上がった。精を出すと腱鞘炎気味になるので、一日十段ぐらいずつにしてからなかなか進まない。このぶんではこの冬に着られるかどうか。そういうこともあって、並行して縫い物も始めた。よくよくの貧乏性でなにかをしないと落ち着かない質。
 先日以前の仲間たちと食事をした。その時二人が古着をリホームしたコートを着てきた。コートの裏に男物の和服の裏地を使ったもので、大胆な模様がなかなか粋でお洒落だ。二人はそれ専門のお店で購入したと言っていたから古着利用といってもお安いわけではない。さて、こちらはそれを見て久しぶりに「断捨離」精神に火がついた。父の羽織を解した。解すといっても縫い糸が相当弱っておりぱらぱら解ける。洗って布に戻して、さあ何が出来るかという古さ。でもごみにするには忍びない。いろいろ考えてロングジレーにすることにした。お洒落に言ってみたが、要するに陣羽織のようなもの。型紙を作り裁断まで完了。これ以上は材料がたりないので今日はストップ。
 父も母も質素に生きたからたいしたものを残さなかったのは幸い。僅かなものを出来るだけ活かしてから始末したい。そう思っての無い知恵絞り。




     億年のなかの今生(こんじょう)実南天  森 澄雄