寒林

 映画「ブルックリン」を見る。第二次世界大戦の後、不況に喘ぐアイルランドからアメリカに移住した若い女性の物語である。古風なファッションや場面設定が落ち着いた映画にしている。テーマはこれも古いが実に普遍的なもの。つまり「生まれ育った土地や老いた親を捨てられるか」。突然の姉の死で故郷に戻った彼女は恋人のことも忘れて故郷に心が移りかけるが、ある出来事から口さがない閉鎖社会のおぞましさを思い出す。そして老いた親を捨てて自由の国へ戻っていく。この経緯を二人の異性の間で揺れ動く女心と矮小化してはつまらない。しかし、今や故郷も都会も随分変わった。そういう意味ではこのテーマは少し古くて理解されにくいかもしれない。
 ヒロインの女優さんがいい。知的で美しい。誰かが原節子のようだと書いていたが、そんな感じがしないでもない。
 ところで簿記は英語でもbokiと聞こえる。調べたら日本語がbookkeepingの音訳なんですって。初めて知った。うまいこと訳したものです。





     寒林を抜けて野鳥の観察館