下萌え

 新聞連載の漱石「門」が終わった。宗助の気持ちに寄り添ってきたので、結末が気になったが、あえて一日ずつ読んだ。宗助の悔恨と不安がどうなるのか、最終回での決着を期待していたのだが案外の終わり方であった。俸給増を伴う職の安堵と春の到来、懸案の弟の問題の解決。いくつかの小さな灯が先を照らすことで終わった。劇的な変化も高邁な悟りもなかった。
 考えてみれば、人生はそんなものかもしれない。幾ばくかの不安や不幸を抱いて、ささやかな灯に心を温め合って、つつましく健気に暮らしているのが庶民だ。その意味で、宗助もお米も親しい隣人であり己自身かもしれない。。
 連載も「こころ」「三四郎」「それから」「門」ときたが、「門」が一番好きだ。

     下萌えや国分寺跡方百間