あさり飯

丹後への旅

 一日目

 陽気に誘われれ、今年一回目の旅をする。コロナはまだ終わったわけではなく、まずは車で出かけられる所をと、丹波への旅。いつものようにオバアの勝手な興味に付きあわせて「神社・仏閣+古代史」の旅である。

 丹波といえば「天橋立」、オバアはすでに三回目であるが、同行者たちは初めてだ。オバアが最初に訪れたのは、花も恥じらう大学一年生の夏。おバカ女子大生の典型だと連れ合いには腐されたが、ハチャメチャ旅であったような遥かな記憶。その当時と比べれば、お店も人出も多く、何より外国語が耳に入る。

知恩寺山門

知恩寺 多宝塔

 まず取り付きの「知恩寺」。日本三大文殊菩薩の寺らしいが、秘仏で拝観はできぬ。境内の散策をしてお参り。かわいい猫のおみくじが目に入り(猫に弱い)、購入。「末吉、良い旅ができます」とある。

  おみくじは末吉と出て春暑し

 廻転橋を渡って松原に。前日の雨が嘘のように晴れ渡り、海も空も青く、さえずりもしきり。

 

       松風や茶店で食らふあさり飯

 

 砂州の松原は、地元の人の通学路にもなっているらしいが、さすがに老人の足で踏破は無理。昔は、連絡船で渡ったような記憶だが、今回は車でもあり湾岸道路を廻って対岸へ向かう。

 明日は天気が崩れるというので、一気に廻り盡くす魂胆だ。幸いにもWBCは勝利に終わり、憂いはなし。(到着までの車中は落ち着かなかった。勝ててよかったし、うれしかった。)

 

  球春や少年となる笑顔(それにしても大谷さんは日本の息子いや孫か)

 

 まずはケーブルカーで「傘松公園」へ。連れ合いは「またのぞき」がしたいという。オバアは大学生の時はしたのだが、今回はもちろんしない。ふらついて転げては、ものわらいですまない。

 「傘松公園」からはバスで「成相寺」へ。西国三十三観音巡りの二十八番札所だ。

成相寺山門

成相寺五重塔

ここまでは思ったほど行く人はいない。山道を登り、階段を上がり相当にきつい。日差しも強くて汗が出る。秋の旅で連れ合いが熱中症になったことを思い、水分補給に心がける。(連れ合いは今度は保険証を持ってきたと言うが、そういう問題ではない。)

 ここも秘仏であり、お前立ちの仏さましか拝観できない。おおきな赤と青の献灯鬼像がある。

境内から少し登った見晴台からの景観を勧められて、また登る。トシヨリはやっとの思いで登るが、そこからの景観は苦労しただけのご褒美はあり。さえずり以外は音もなく、眺望ははるか舞鶴湾までも。

 山より下りて隣の「籠神社」。古代史ではなにかと出てくる古い縁起のある神社である。ご祭神はヒコホアカリノミコト(ニギハヤヒノミコト)、天孫族ニニギノミコトの兄とも言われ、天の磐船で降臨されたという。宮司は海部氏が世襲で、日本最古の家系図(国宝)が伝わる。カメラを向けたら境内は撮影禁止と注意され、曲垣の外からだけちょっと撮影、伊勢神宮と同じ「神明造り」の建物と、回廊の五色の座玉(すえたま)をのぞき見るだけにする。

 せっかくだから奥宮の真名井神社の磐座もと足を運ぶが、かなり疲れてトシヨリはふらふらだが、ここまで来ると執念である。森閑とした森の奥に伊勢の外宮の豊受大神が祀られている。しめ縄を巻かれた磐座が立派である。

 一日目はここまで。

 近くでとった宿(余花の宿・花笑舞)はイタリアレストランを兼ねた民家をリホームしたところ。比較的リーズナブルで食事はイタリア風。温泉宿の食事量にうんざりするトシヨリにはまずまずであった。

はまちのカルパッチョ

 

 二日目

 宿の前の海。かもめがいる。

 雨が降りそうなので降らぬうちに残りの予定を消化しようと、与謝町の「与謝古墳公園」へ。オバアの趣味でまたまた古墳である。(いささか家族は呆れ気味)ここは三十年前、「飛鳥古都を守る会」という団体で訪れたことがある。整備の始まったばかりで、まだ「はにわ館」もなかった。今回再訪したら古墳は見事に整備されて緑に覆われ、なかなか見ごたえがあった。古墳上に登れるので傘を杖代わりに登る。つかまるものも遮るものがなく、風がありスリル満点。転がり落ちぬように早そうに下るが、古代のタニハ(丹波)地方の首長の気分になれる。円墳、方墳と前方後円墳からなる1600年前の古墳群だが、最大の蛭子山古墳にはさすがにこわくて登れなかった。

 

蛭子山が古墳 丹波地方三大古墳の一つで145メートルある。三段築成がよくわかる。4世紀後半の古墳。

作山1号墳。二重のはにわ列と造りだしをもつ円墳。葺石で覆われている。頂上に石室が見られるようになっている。

珍しいワンちゃんの埴輪。形状をよくとらえている。イノシシも。

 古墳見学のうちから湿った風が強く、ポツポツときて急ぎ見学終了。後は帰宅のみである。

雨脚がどんどん強まる中帰宅。到着時刻は2時半ごろ、(帰宅して娘に報告したら、もう帰ったのといわれた)往復500キロ。萌えだした山々に白いコブシやヤマザクラが点々と映え、美しい自然と平和なこの国に感謝という話で終わった旅だった。

 

 帰宅したらわが家の桜は五分咲き、木蓮は満開だった。