綿虫

ノラっちの思い出

 毎年この時期になると、岩合さんの猫カレンダーを買うのが恒例になっている。今年も昨日届いた。驚いて、ついで嬉しかったのは表紙の「のら」がわが家のノラっちにそっくりだったことだ。わが家のといっても、行方不明になってもう十三年、未だに時々話題にあがる猫である。

 わが家に居付いたのはちょうど今頃の季節で、おでんのだしを取った鰹節を与えたのが最初だった。それから七年いたが、野良ぐらしの抜けぬ猫で玄関の土間までは入るが、玄関を閉めると泣いて不安がるのである。仕方がないので犬小屋ならぬ猫小屋を用意して、冬は湯たんぽをいれてやるという過保護さ。困ったのは台風の時で、ビュンビュンと吹きつのっているのに、玄関の戸を少し開けて、待機してたこともあったけ。

 油断していたら、春にはかわいい仔猫をつれてきたので二匹とも手術を受けさせて大変だった。二匹で(ノラと子ノラ)庭先を駆け回って可愛かったが、半のらなのでご近所にも迷惑をかけたのは、心苦しかった。

 その後、子ノラは皮膚癌を発症。酷い醜い顔になって一年ぐらいで死んでしまったが、ノラはぶくぶく太ったばあさん猫になっても元気だった。相変わらず玄関の土間までが出入りする範囲だったが、時に興味を覚えてか、こっそりと二階まで遠征するのだ。が、見つかると猛ダッシュで逃げて素知らぬ顔をするのも可笑しい。

 ノラが行方不明になったのは留守番をさせて旅行(一泊)をし、帰ってきた次の日だった。夜小屋で眠っていたのを見たのに、朝にはいなくなっていた。張り紙までして連日尋ねる歩いたのに見つからなかった。ペットロスというのは辛いというが、何日も夢に見るほど辛かった。

 そして十三年たって、いまだにTと私はノラっちの思い出で盛り上がる。昨日もカレンダーの猫がそっくりだとか、否もう少し毛色は薄かったとか、まったく馬っ鹿じゃないのである。

 

 

         綿虫や垣根をくぐる猫の尻