春風

土偶を読む』 竹倉 史人著

 土偶とは一体何をかたどっているのか。豊穣を願う妊娠女性像かと言われながらも、今一歩説得力ある説明がなかった。が、この本の仮説は実に面白かった。

 筆者は土偶の形態を具体的に分析する方法で次のように仮説を立てた。つまり「土偶は食用植物と貝類をかたどっている」という考えである。事例として取り上げられているのは、九種類の土偶群であるが、その形態的特徴と対象となった植物との酷似が、写真や図で説明されている。さらに、それらの植物や貝類が当時の人々の主要な生業の中心であったことも証明されている。

 森や海から主要な食べ物を得ていた縄文人は、それらを形象化、フィギュア化して植物霊祭祀をしたにちがいない。縄文中期以降に土偶が多く作られたのはそのせいで、弥生期に至って一気に消滅したのは生業の大きな変化によるものだと筆者は解く。

 因みに筆者の見立てによれば、「ハート形土偶」はオニグルミ、「山形土偶」はハマグリ、「中空土偶」はドングリ、「縄文のビーナス」はトチノミ、「遮光器土偶」はサトイモである。

 概ね非常に説得力があったが、かって見た「仮面土偶」や「八頭身土偶」などは事例に含まれてはおらず、これらは何に似ているのかと考えさせられた。

 研究書というより一般向けで、読みやすくわかりやすかったのもよかった。

 

 

 暖かさに誘われて、歩いていたら石垣に黄色い帽子が置いてあった。風で飛ばないように石がおさえになっている。拾った人の親切にちがいない。昔、教材に「黄色いバケツ」とか「白いぼうし」とかあったけ。どちらも落とし物だったような。キチョウになって飛ぶ前に早く持ち主に戻るといいな。

 

 

        飛びかねぬ黄色い帽子春の風

 

 

 

f:id:octpus11:20220312162155j:plain

f:id:octpus11:20220312162240j:plain

おやおやこんなところに猫チャン。日当たりはバツグンで邪魔者は来ないね。