時雨

映画『リトル・ダンサー』を観る

 昨日は終日雨だったので、BS映画館の『リトル・ダンサー』を観た。2000年のイギリス映画。

 話は80年代の半ば、イギリスの炭鉱町ダラムが舞台だ。少年のビリー・エリオットは炭鉱夫の父や兄、認知症気味の祖母と暮らす。母は亡くなって、いない。不景気らしく炭鉱労働者たちはスト決行中、中にはストに参加しない人もいるが父も兄も過激派だ。課外活動でボクシングを習っていた少年は、ある日隣りの女子たちのバレエ教室に惹きつけられる。本来踊りが大好きだった彼は密かにバレエ教室に通い出す。

 バレエ教室のコーチは少年にバレエの才能を見出し、ロイヤルバレエ団のオーデションを受けてはどうかと勧める。その気になった少年はコーチの個人的レッスンは受け、いよいよオーデションとなった間際、秘密のレッスンは父の知るところとなった。バレエなど女のするものだと父は激怒し、コーチの説得にも耳を貸さない。

 失意のビリーだったが、クリスマスの夜、父は初めてビリーの踊りを目の当たりにした。息子の才能を実感した父は、なんとか自分の手でオーデションを受けさせたいと、ロンドン行の費用捻出のため苦渋のスト破りを決行するのだが・・・

 父親の苦境を知った仲間のカンパや質通いで得た金で、二人は生まれて初めてロンドンに向かいオーデションを受けた。やきもきした結果、届いたのは合格通知。

 最終章は10年後である。父と兄はビリーのバレエ公演に招かれる。プリマになった彼が『白鳥の湖』を踊る舞台だ。見上げる老いた父の目に涙が光る。

 長々と書いたが、感動的な映画だった。ビリー少年の踊りも演技も素晴らしかったが、(実際彼はこの演技で賞を受けた)、私は父親の描かれ方に感銘を受けた。妻を失い男手で子育てに苦悩する姿、子の才能を知って何とかしてやりたいと奮闘する姿、そして子の成長に涙する姿である。サッチャー政権による労働組合への弾圧という時代背景、時代を彩った音楽の数々、演出もじつに巧みだった。日本では最近やっとクローズアップされてきた、ジェンダーにとらわれない生き方についても、ビリーと親しかった少年の姿をとおして描かれている。

 この作品は様々な賞を受賞し、ミュージカル化もされたようだが、私は全くそんなことも知らなかったので、実に新鮮な気持ちで感動した。

 

 昨日の雨を境にいよいよ本格的冬の到来のようである。美濃は朝から時雨模様、おそらく飛騨は雪になるにちがいない。

 

 

 

  

        亡き姉の番号削除時雨かな

 

 

 

 

f:id:octpus11:20211123125923j:plain

街路樹も色づいて落葉しきり

f:id:octpus11:20211123125946j:plain

大鏡に写る自分と対話するカラス