暮早し

『サコ学長、日本を語る』 ウスビ・サコ著

 毎度のことだが、Tが読んでいて面白そうなので、回してもらう。

 京都清華大学の学長がアフリカ出身の方ということは、何かで読んだことがあったが、どんな方かは知らなかった。アフリカのマリ共和国に生まれ、中国での留学を経て訪日。京都大学で博士号取ったという優秀な来歴を持つ方だ。優秀というだけでなくスケールが違う。多分日本人ならまずいろいろと周囲の思惑を伺うのに、自分の理想を実現するためと迷いなく学長に立候補された。こういう方だから日本の教育や政治、日本人の社会などについての指摘もかなり厳しい。

 提言はあちらこちらにあるので、乏しい理解力ではまとめにくいが、総じて、同一性とか均一性というか世間並みにこだわる日本人や社会、画一的な教育を批判しておられるように思う。全くそのとおりで、学校だけがすべてではないし、安定した仕事に就くために大学へ行くわけではない。が、そう言い切れないのが哀しいところだ。最近多様性などが声高に言われるが、世間並みというのは本当根強い価値観だ。日本は普遍性を強調しすぎるため教育もフレームにあてあめようとするきらいがあると言われる。

 この本を読んで思ったが、アフリカについても私たちは知らなすぎる。マリ共和国というのもまず地図を開いて知った程度だ。筆者の奥さんが子連れ単身で中国で働く道を選択した時、マリからお姑さんがすぐに中国に渡って、お嫁さんと孫の面倒をみたという話がある。お姑さんは中国語も日本語もできないというのだが、何という柔軟さ何という自由さ。日本に住むお母さんが慌ててお礼に中国に行ったということに、お国柄の違いを感じてしまった。

 サコさんは教育に必要ものは「自分でものごとを選択する力や社会を変える力を育てることだ」とも「自由が必要なれば自分で獲得するしかなく自分自身の意識で自由にするしかない」とも言われていて、まことに若い国の出身らしい。かって変革期に日本人もそうであったような気がするが、今や私たちは忘れてしまった。

 温暖化の危機が迫る中、自分で考え行動する若い人の出現に期待したいものだ。

 

 

 

 

          横綱は盤石相撲暮早し

 

 

 

 

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うちの木も色づいてきた

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アカノママの群落