盆供養

 


『海をあげる』  上間 陽子著

 出会いは「Webちくま」だ。入院中に読んで、いい文章だと思った。Tに話したら共感、全篇を読みたいと書籍化されたこの本を買ってきた。

 筆者は沖縄に住む若手の社会学の研究者だ。「未成年少女たちの支援・調査に携わる」と著者紹介にあるが、この本にもそうした聞き取りに取材した話がいくつかある。

 子どもの頃に受けた虐待や性暴力、思春期の生き辛さと若年での出産、貧しさのために性をひさぐしかない現実、無理解で支援のない周囲。唯一筆者の差し伸べる手も信じられずに逃れていくという絶望。

 絶望はそれだけではない。普天間基地の代替という名目で容赦なく土砂が投げ込まれる辺野古の海。軟弱地盤と言っても、代替になるだけの滑走路がとれないと言っても、政府は耳を貸さない。まだ遺骨が眠るという土地をコンクリートで固めても工事は続行するという。

 「この海をひとりで抱かえることはもうできない。だからあなたに、海をあげる。」彼女の悲痛な叫びに、私たちは何が出来るのだろう。

 もちろんだが、全篇が厳しく暗い話ばかりではない。愛娘「風花ちゃん」の愛らしさ、祖父や祖母の死を通して知るおおらかな沖縄的死生観。一度行っただけだが青い海と緑の濃い沖縄を思い出す。

あの沖縄がこれ以上虐げられませんように・・・私はせいぜい小さな間違えのない選択をするしかない。

 

 

 

 

       盆供養津波もコロナも父母知らず

 

 

 

  一昨日、雨の中を夫と墓参りをする。この辺りの慣習で紅白の提灯を携えて参るのだが、すぐに破れると思い、花だけの供物だ。コロナの感染拡大で今年も娘一家は遠慮、異例のお盆もすでに二回目になった。

 昼過ぎ叩きつけるような降り。隣の川の様子を見ようと外を覗くと、なんと庭を亀が歩いていた。結構な大きさで落ちた柿を齧って、ギボシの大株の中に入っていったが、迷わずに川に戻れるかなあ。

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