雷雲

『在宅ひとり死のススメ』  上野 千鶴子著

 この本はよほど需要が高いのか、半年ほど待ってやっと回ってきた。

 上野さんの論というのは、こうである。

なにより満足のいく老後というのは、気ままな「独居」です。介護保険を利用すれば、死ぬまで独居ができます。訪問介護訪問看護・訪問医療の3点セットで在宅で死ぬまで過ごしましょう。立会人のいない「死」を孤独死と呼ぶのは止めましょう。死後の発見さえ早くすれば孤独死という定義はなくなります。介護保険利用で人の出入りがあれば、死後の発見が遅れるということはありません。

 さて、ここまではわかりやすく納得できたが、「認知症でもOKです」という件は、読み直してもよくわからなかった。「地域での排除より包摂」という難しい言葉で先進的な取り組み例を紹介されているが、当事者に関わってきた経験や他の人の体験を聞いても、認知症の人の在宅を見守るのは難しい問題だと思う。

 もう一点、疑問に感じたのは「認知症発症と薬の関係」で近藤誠医師の著書が紹介されているところである。近藤医師の「癌の治療」について見解は、かなり問題視されているようだが、薬についても発言(『このクスリがボケを生む』、降圧剤やコレステロール降下剤が脳障害原因と主張されているようだ。私なぞはこういうクスリの常用者なので、非常に嫌な気がしたが、医学的に確かな見解なのだろうか。先に読んだ樋口さんとの対談でも「出されたクスリを飲まないで捨ててしまう」という話があったが、それこそ医療費の無駄遣いだと思ったことだ。

 樋口さんについては先に読んだ本で、随分失礼な感想を書いたが、介護保険制度の歴史で大きな働きをされてきたことがよく分かった。最終章「介護保険が危ない」は、保険料を払いながらもよくわからなかった制度の現時点での姿や、後退を許してはいけないとする意味がおぼろげながらつかむことが出来た。

 自分自身は独居ではないが、在宅で死ぬか施設で死ぬかそれはどちらでもよいと思う。だが、上野さん同様、集団生活が好きではないので、デイケアなどにも行かずに出来るだけ家で過ごせればそうしたいと思う。介護制度の利用で可能なら、その節はよろしく頼むとお願いしておかねばならない。

 

 明日はやっとワクチンの一回目である。

 

 

 

 

           一陣の風雷雲は厚さ増し

 

 

 

 

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