たんぽぽ

『限りなく繊細でワイルドな森の生活』  内藤 里永子著

 「人生の最も盛んなとき」五十代に、筆者は親しい人々を次々と亡くした。

 「なぜ?死に神の狙い定め方の理不尽さが、横にいたわたしの身をも裂いた。・・・人に見られないところに居たい。ただ死者たちを悼みたい。わたしの終わりをそこで迎えたい。」

 そう思った彼女は「独り森の中に隠れ住んだ。」六十代から七十代の十年間、夏のみならず厳しい冬の間も。森の恵みを食し、森の木々のエネルギーを受取り、小鳥のさえずりで起き、時には窓越しにカモシカの瞳と見つめ合う暮らし。二階を猿の大群に乗っ取られたりしても暮らし続けて、繰り返し思い出すのは先に逝った人々のこと。

 それにしてもなんとたくましい。ひと気のない森の古家に棲むなんて、それもなかなか優雅に暮らすなんて、この世代の人は肝が座っているのだろうか。ちょっと私には読みにくいが、詩的な文章は彼女がターシャ・テューダーの翻訳者であるということで納得した。

 十年という森の暮らしは、彼女を「癒えた者」にした。大きな鳥が古家の中で死んでそのおぞましい結末が、古家を柩に見立てた自身の考えを打ち砕いた。森を出て人と出会って、自分の「生をきっちりと生き切る仕事を果たそう」と。

 筆者1937年生まれ。驚くほど若々しい感性だ。

限りなく繊細でワイルドな森の生活

限りなく繊細でワイルドな森の生活

 

 

 

 

          たんぽぽのぽぽは風待つばかりなり

 

 

 

 

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オオツルボ

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