つくつくし

『イトウの恋』 中島 京子著

 机の上にずっと積読の一冊に、『日本奥地紀行』がある。それもいいかげんに読み終わろうと思っているせいで、一番上で埃をかぶっている。。

 この話がその『日本奥地紀行』に材を得たものだと知って、読んでみることにしたのはそのせいだ。イトウとはイザベラ・バードの通訳を勤めた伊藤鶴吉をモデルにしてはいるが、お話は全くのフィクションだ。第一伊藤は当時まだ十八歳であり、一方イザベラは四十七歳。恋など想像もできぬ年齢差である。加えてイザベラには伊藤に対してあまり好意的でない。それでも中島さんは見事なお話に仕立てあげられた。その作家力に驚くしかない。 イトウが残した手記を縦軸に、手記捜しをする歴史教師とイトウの子孫の触れ合いを横軸に、もつれた糸を解きほぐしていくような面白さがあった。

イトウの恋 (講談社文庫)

イトウの恋 (講談社文庫)

日本奥地紀行 (平凡社ライブラリー)

日本奥地紀行 (平凡社ライブラリー)

 

 気温が上がってどんどん春めいてきた。レンギョウが咲き、紅梅が咲き、黄スイセンが咲き始めた。田舎道を歩くくらいは自由だからと出来るだけ散歩をしている。

 

 

 

 

     せこせこと鳩の夫婦やつくつくし

 

 

 

 

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