水温む

『焼野まで』 村田 喜代子著

 著者が子宮癌を子宮摘出手術を受けずに、放射線治療で治したということは、前にもどこかで読んだが、この本はその顛末を書き表したものである。

 放射線治療といってもやや特殊な放射線治療のようで、調べたところではこの治療が胡散臭いという意見もあれば、手術をしないでも完璧に完全に治ったという人もある。(村田さんは治った例になる)健康保険が利用出来ない自由診療であり、病院が遠隔地(鹿児島)でもあり入院施設もない(ホテルなどに滞在して治療する)。いきおいお金や時間に余裕のある人たちしか利用できない、あの希林さんも筑紫哲也さんも利用されていた施設らしい。

 私なぞの受けた放射線治療とどこがどうちがうのかはよくわからないが毎日2グレイの放射線を照射されるということでは同じだ。2グレイというのは2シーベルトのことで「原発から半径20キロメートル圏内でも、一年間の積算線量が20ミリシーベルトを超えると避難区域になる」というほど、2グレイというのはすざましい線量だ。が、だからこそピンポイント照射で癌を殺傷できるのらしい。2グレイを筆者の場合は26日、あと5グレイを6日、そして2グレイを3日である。わたしは2グレイを33日であった。局部的だが毎日放射線を浴びるので、当然だが副作用がある。筆者は体の怠さ、宿酔という気持ちの悪さ、腸の変調、食欲不振などなど。私の時も同じようなものだったが粘膜に近いせいかやけどのような痛みがひどかった。さすがに作家は違うなあと思うのはその辛さや不安感で一冊書いてしまわれたことである。私なぞは日記に「だるい、痛い、ごろごろしている」と毎日同じようなことを書いていただけである。

 筆者が治療を受けられたのは東日本大震災の年だったというから、すでに10年。もう安心である。私の場合は随分大きなものが消えたのだが、2年半後に再発らしき気配があり手術になった。結局再発ではなかったようだが、放射線治療の後遺症もあり今に至った。それにしても私は感受性が案外鈍いのではないかと思いはじめている。癌告知を含めて何もかも成り行き任せで過ぎてきた。こういう鈍さは神様のお恵みかもしれないなら、それはそれで有り難いことだ。

 

 散歩をしていたら彼岸花の球根がごろごろと掘り出されていた。拾って帰ってH殿に隣の川の堤防に入れてもらった。咲くかな?咲くと嬉しいのだけど。

 

 

 

 

          水温むタモは光を掬いをり

 

 

 

 

焼野まで

焼野まで

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頭が白いカワウです。婚姻色だということを初めて知りました。

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こちらも恋のお相手さがしかな。

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